初診の患者さんを診察する際は、まず自分の目で患者さんを観察し、自分の耳でその訴えを聴きます。
そのような診断学の基本を忘れて患者さんに向き合わずに紹介状や検査結果に頼る診療を目にすることがあります。
筆者が担当する大学病院の水曜の[紹介初診外来]では、私の前に若い眼科医が予診をとります。
予診係:[右目の視力が0.01に低下した33歳の男性が、球後視神経炎の疑いで開業の先生から予約外で紹介されてきました。診察の前にハンフリー視野検査をORTにオーダーしておきましょうか?]
彼は患者さんに対面する前に読んだ紹介状の記載内容から判断して、そのような相談をしてきました。
そこで以下のように指導しました。
私:[まずは患者さんにどのように見え辛いのか尋ねなさい。その後、患者さんの左目を隠して相対する自分の顔がどのように見えるか確認しなさい。顔だけでなく正面の世界が真っ暗なら大きな絶対暗点なのでハンフリーではなくゴールドマン視野計GPで周辺視野の残存程度を確認する必要があります。顔1個分程度の中心暗点ならハンフリー30-2視野がよいでしょう。顔の中心の目鼻のあたりだけが見えにくいなら10-2視野です。]
ハンフリー視野は患者さんが慣れていないと正しい結果が得られないことがあります。
そのような場合でも検査前に患者さんに向かい合って自覚的な見辛さを確認し、対座法での視野検査https://meisha.info/archives/1444で中心暗点のようすを確認しておけば、機械による視野検査の信頼度を正しく判断できます。
具体的には図のように他眼を隠して、相手の医師の顔全体あるいは一部のどの範囲が見えないのかを尋ねます。