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涙腺部の悪性リンパ腫

上まぶたの外側に無痛性のしこりを触れる場合、悪性リンパ腫やミクリッツ病(IgG4関連疾患の涙腺病変)が疑われます。
痛みを伴い発赤する場合は感染症である急性涙腺炎を疑います。

画像所見

診断には眼窩の3方向のMRI検査が有用です。
涙腺自体の腫瘍である涙腺多形腺腫腺様嚢胞癌では内部が不均一な塊状の腫瘍形態ですが、悪性リンパ腫IgG4関連疾患では内部は均質です。
リンパ腫では眼球や外眼筋の間の隙間を埋めるような拡がりを示します。

眼窩リンパ腫とIgG4関連疾患は臨床像や画像所見は類似しますが、前者は放射線または化学療法、後者はステロイド内服療法と治療法が全く異なります。
そこで正確な診断には病理検査が必須です。

幸い、眼窩骨外側上縁下に存在するので、腫瘍の部分切除による生検術は比較的容易です。
外側の眼窩骨上縁を指で触れながら、2cmほど皮膚を切開して組織をかき分けて骨縁に達し眼窩隔膜を切開すると、眼窩骨上縁に接する白色の腫瘍が確認できるので、これをメスや剪刀にてある程度の量を切除します。

病理、遺伝子再構成、フローサイトメトリー、染色体検査

リンパ腫の場合は悪性の有無(モノクローナルな増殖)や細胞起源、あるいは染色体異常の有無が治療方針にかかわるので、病理組織、遺伝子再構成検査、フローサイトメトリー検査(リンパ球細胞表面抗原検査、染色体G-banding用に4つの検体が必要です。