日本は結核の中蔓延国で、2016年の人口10万人当たりの罹患率は13.9です。
2009年の日本眼炎症学会による調査では,結核はぶどう膜炎の原因の1.4%を占めるとされています。
高瀬博: 結核の診断と治療. 臨床眼科 72:318-20.2018
結核性ぶどう膜炎の定まった診断基準はなく、下記の5項目を総合して判断します。
大野重昭他: ぶどう膜炎診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:635-96.2019
1. 眼外結核の存在
2. 結核に典型的な眼病巣の存在
3. 結核に対する免疫反応
4. 他の既知のぶどう膜炎の除外
5. 抗結核療法による治療効果
全身特に肺の結核病巣の確認のため胸部X線あるいはCT検査を行い、呼吸器内科の協力のもと喀痰塗抹検鏡や培養同定検査、PCR検査を行います。
ただし眼以外の結核病巣を欠く結核性ぶどう膜炎も存在します。
結核性ぶどう膜炎は病理学的には肉芽腫性ぶどう膜炎で、角膜後面沈着物KP、虹彩結節、虹彩後癒着、隅角の結節やPASなどがみられます。
また血栓性静脈炎を示すことが多く、網膜出血を伴いFAでは蛍光漏出とNPAがみられます。
ツベルックリン皮内反応(ツ反)で陽性を示しますが、BCG接種の影響で擬陽性となることが問題です。
QuantiFERON TB-Gold (QFT)やTスポットはインターフェロンγ遊離試験 (interferon-gannma release assay: IGRA)と呼ばれ、患者血液を結核菌特異抗原で刺激することによってTリンパ球から遊離されるサイトカインであるIFNγを測定します。https://www.kekkaku.gr.jp/pub/pdf/Interferon-gamma_release_test.pdf
活動性の肺結核が存在する場合はもちろん、眼外病変が認められない場合でも抗結核薬の多剤併用療法を6-9か月行います。
なお網膜静脈炎は結核菌に対するアレルギー反応なので、炎症が強く視機能障害が重篤な場合はステロイド剤を併用します。
また広範なNPAがみられる場合は新生血管阻止目的でレーザー光凝固治療も考慮します。