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アミオダロン角膜症

アミオダロン(Amiodarone、商品名アンカロン)は、Vaughan-Williams分類でⅢ群(Kチャネル遮断薬)に分類される抗不整脈薬です。
心室細動や心室性頻拍など生命に危険のある不整脈が再発し、他の抗不整脈薬が無効または使用できない場合に投与されます。
間質性肺炎、肺線維症、既存不整脈の重症化など重大な副作用のほか眼科領域では角膜色素沈着が高頻度にみられます。
川本晃司, 近間泰一郎, 西田輝夫: 日常みる角膜疾患 アミオダロン角膜症. 臨床眼科 60:672-4.2006

症例:71歳女性

Nさんは両眼の視力低下を訴えてA眼科医院を受診し、白内障手術目的でB総合病院眼科を紹介されました。
しかし心不全、腎不全、糖尿病など基礎疾患があり、CRT-D(両室ペーシング機能付植え込み型除細動器)の埋め込み手術を受けて大学循環器内科に通院していることもあって大学病院眼科での白内障手術をすすめられました。

矯正視力は0.3/0.1で両眼とも高度の後嚢下白内障がみられ、左眼では核白内障も伴っていました。

また両眼の下方の角膜上皮砂粒状の沈着物による陽炎様の紋様がみられました。
循環器内科での投薬内容を確認するとアミオダロンの投与が確認され、アミオダロン角膜症と診断しました。

アミオダロン角膜症への対応

製薬会社サノフィの薬剤添付文書では[(肉眼的な)角膜色素沈着の副作用頻度としては21.2%]で、[(細隙燈検査レベルでは)ほぼ全例で角膜色素沈着があらわれる]と記載されています。
しかし、通常は無症候性であり、[視覚暈輪、羞明、眼がかすむ等の視覚障害があらわれた場合に減量又は投与を中止すること]とあります。
https://www.e-mr.sanofi.co.jp/dam/jcr:d8065110-f471-493a-9ffa-eec7efe903ee/ancaron100.pdf
今回のケースでは視力低下の主因は後嚢下白内障であり、瞳孔領からはずれたアミオダロン角膜症については無症状と判断されたので、アミオダロン中止の依頼を内科医にすることなく、両眼の白内障手術を予定しました。