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複視原因と MRI 検査

複視の原因別頻度

最近注目されるようになったsagging eye 症候群https://meisha.info/archives/2663も含め、複視の原因別頻度を調べた研究が2020年に報告されました。
米国で診療を受けた40歳以上、945例の複視症例原因は表のdiagnosisの23項目で、日本語訳を病名に示しました。
Goseki T et al.: Prevalence of Sagging Eye Syndrome in Adults with Binocular Diplopia. Am J Ophthalmol 209:55-61.2020

このうち青で示した10項目共同性斜視です。
眼位ズレに伴う複視を幼小児期から自覚しているケースと、融像機能の低下で高齢になって初めて複視を自覚したケースが含まれます。
また紫で示した3項目眼運動神経麻痺https://meisha.info/archives/1114です。
これらをまとめてその他を除くと、右の円グラフの12項目になります。

通常の頭部水平断MRIで異常がみられる複視

このうち下記円グラフのピンクで示す眼運動神経麻痺(19%)の一部(脳梗塞、脳動脈瘤、脳腫瘍が原因)核間麻痺https://meisha.info/archives/4470(1.3%)の多く(脳幹部梗塞、多発性硬化症が原因)では、通常の水平断のみの頭部MRI検査で原因が特定できます。
ただし眼運動神経麻痺のうち糖尿病や高血圧で神経の栄養血管が閉塞する血管性眼運動神経麻痺ではMRI画像は参考になりません。

眼窩冠状断MRI検査で診断できる病型

一方、黄色で示す下記4病型は、冠状断を含めた眼窩MRIで診断できます。
1. sagging eye 症候群:眼球後半部位での眼窩冠状断でLR-SRバンドの菲薄化/伸長と外直筋の下垂https://meisha.info/archives/5103
2. 甲状腺眼症:外眼筋の肥大と脂肪抑制T2WIでの高信号https://meisha.info/archives/27
3. 眼窩壁骨折:冠状断で上顎洞に脱出する下直筋像(通常はCTで診断)
4. 近視性斜視(英文論文ではheavy eye syndromeと記載されている):上/外直筋の間から眼球後部が亜脱臼する冠状断像https://meisha.info/archives/2893
これらの合計は44.5%です。

MRI検査のオーダー方法が重要

複視患者さんのMRI検査を脳神経科に依頼しても、水平断だけでは5人中4人は[頭蓋内には異常ありません]という返事がかえってくることになりますがhttps://meisha.info/archives/3160眼窩冠状断も含めたMRI検査をオーダーすれば複視患者の5割以上で原因が推定できることになります。
ただしそのためには眼窩3方向、脂肪抑制、眼球冠状断の細かいスライスなどきめ細かいMRIオーダーが必要です。
甲状腺眼症では脂肪抑制T2WIで浮腫を示す外眼筋がわかりますが、sagging eye 症候群ではT1WIや脂肪抑制なしのT2WIでLR-SRバンドなどが確認できます)

この記事は2023/6/12にアップした記事を修正したものです。