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光の方向と色光で調べる網膜/視神経の機能

最近よく見えなくなったようだという89歳の男性、Aさんは認知症で家族に連れられて病院を受診しました。
右目は肉眼でもわかるほど真っ白に濁った白内障で眼圧は15mmHgです。
10年以上前に白内障手術を受けた左目は、眼圧が35mmHgと上昇、眼底検査で視神経乳頭は蒼白で末期緑内障の状態です。
視力は両眼とも光覚弁です。
頼りだった左目の緑内障の進行で視野が徐々に失われて見えなくなったと判断しました。

右の白内障手術でみえるようになるか?

超音波Bモード検査を行い眼底の確認ができない右目に網膜剥離がないことは確認できました。
しかし緑内障など視神経の病気や網膜の委縮が右目にあれば、右目を手術しても失明同然の左目同様見えるようになりません。
そこで行ったのが光の方向当て検査光の色当て検査です。
白内障などで眼底のようすが不明の目の網膜と視神経のおおまかな機能を調べる簡易検査です。

光方向当て検査 light projection test

反対の目を手で隠し、暗室にて眼底検査で使う倒像鏡の強い光を上下左右の各方向から照らして、患者さんに光が来た方向を答えてもらうものです。
緑内障でほぼ失明の左目では方向を答えられませんでしたが、白内障の右目では方向を正しく答えることができました。

光の色当て検査 color perception test

次に同様に反対目を隠して正面から赤、青、緑の色のついた光を照らして、その色を答えてもらいました。
緑内障の左目では色を答えることができませんでしたが、白内障の右目では正答したので、Gross color visionありと判定しました。

Steinert RF. Cataract surgery 3rd ed: p29 Saunders Elsevier. 2010

以上の検査から白内障の右目は緑内障の左目よりも網膜と視神経の機能が良好であると判断され、手術を決定しました。
手術後、正確な視力評価は困難ですが、行動からはよく見えるようになったことが明らかでした。