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前房蓄膿と細菌感染

前房蓄膿は白血球が水平面を作って前房に貯留する所見です。
ベーチェット病(左)、細菌性角膜潰瘍(中央)、白内障術後などでの細菌性眼内炎(右)でみられます。

前房蓄膿の組成

皮膚の傷口では、繁殖する細菌を貪食するために集まってきた白血球(主に好中球)が膿として白く見えます。
上記の前房蓄膿を示す3つの病態では、細菌感染の関与と前房内の細菌の有無が、表のように異なります。

ベーチェット病細菌性角膜潰瘍細菌性眼内炎
細菌感染なしありあり
前房内細菌無菌無菌細菌増殖
前房蓄膿と細菌

病態

ベーチェット病は細菌感染ではなく、好中球の暴走による炎症が目、皮膚、口腔粘膜、陰部粘膜で再発性にみられます。
目では虹彩や毛様体の血管から好中球が前房に遊出しますが、そこに細菌感染の直接の関与はありません。
細菌性角膜潰瘍では、角膜上皮が損傷した部位に集まってきた病原性細菌が産生する菌体外毒素のコラゲナーゼによって、角膜実質が侵食されます。
これに応戦するために好中球が引き寄せられますが、角膜には血管がないので、虹彩や毛様体の血管から好中球が前房内に出てきます。
しかし前房内には細菌は存在せず、前房蓄膿は細菌を含まない好中球の貯留です。
白内障の術後や抗VEGF薬硝子体注射後にまれに遭遇する細菌性眼内炎は、眼球内に持ち込まれた細菌が前房や硝子体中で増えている状態で、それを駆逐するために出てきた好中球と攻撃対象の細菌の混合が前房蓄膿として観察されます。