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糖尿病網膜症の有病率

海外の大規模疫学スタディの報告では、糖尿病(DM)患者における糖尿病網膜症(DR)有病率は30-40%で、日本での久山町研究や舟形町研究でも15-23%とされています。
村上智昭. (糖尿病網膜症の)疫学. In: 北岡隆, 吉村長久, eds. 糖尿病網膜症診療のすべて(眼科臨床エキスパート): 医学書院.98-103. 2013
しかし日常診療で内科から紹介されてくるDM患者さんでDRを発見する確率はこれらの数字よりもはるかに低い印象です。

糖尿病網膜症の発症頻度

一方本邦で行われたコホート研究では、初診時にDRなしとされた推定罹病期間が 平均約10年のDM患者さんを追跡調査したところ、その後の8年までにDRを発症したのは27%でDRの発症は年率3.3%とされました。
Kawasaki R et al. Incidence and progression of diabetic retinopathy in Japanese adults with type 2 diabetes: 8 year follow-up study of the Japan Diabetes Complications Study (JDCS). Diabetologia 2011;54: 2288-94

人間ドックでのDR発見率

そこですでにDM治療がされている患者さんではどうなっているのかを人間ドックの眼底写真で調べてみました。
ある日の人間ドックを受診した140人中、DMと診断あるいはDMの治療薬を投与中のヒトは18人(13%)いました(42-78歳、男性11女性7名)。
しかしその左右の眼底写真(後極50度)でDRがみられたのはゼロでした。
やはり教科書的な数値から予想されるよりははるかにDRの頻度は低いようです。

先のコホート研究ではDRの発症はHbA1cとDMの罹病期間に依存するとされています。
人間ドックを受診するDM患者さんは病識があって治療によりHbA1cが低く管理されているため、DRの発症が低く抑えられているのかもしれません。