網膜色素上皮(RPE: Retinal pigment epithelium)が下層のブルッフ膜から剥がれてドーム状に隆起した状態は網膜色素上皮剥離(PED: Pigment epithelial detachment)と呼ばれます。
RPEの下面とブルッフ膜に挟まれたスペースに貯留する内容によって、漿液性PED、出血性PED、ドルーセ様 (Drusenoid) PED、血管性 (vascularized) PEDなどに分類されます。
PEDを生じる主な病態には滲出型加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)があります。
Mrejen S et al: Multimodal imaging of pigment epithelial detachment: a guide to evaluation. Retina 33:1735-62.2013
PCVにみられるPEDは血管性PEDで、図のように隆起したRPEの裏面にはりついたポリープ状血管から漏出する漿液や出血でPEDを生じます。
CSCでは脈絡膜血管から流入する漿液成分によって、漿液性網膜剥離とともに漿液性PEDを生じます。
AMDにはさまざまなPEDがみられますが、血管性と非血管性に分類すると治療方針もわかりやすくなります。
Tan ACS et al.: A Perspective on the Nature and Frequency of Pigment Epithelial Detachments. Am J Ophthalmol 172:13-27.2016
血管性PEDの原因となる新生血管には脈絡膜由来のタイプ1新生血管、または網膜血管腫状増殖(RAP)にみられる網膜由来のタイプ3新生血管があります。
一方、RPEと視細胞の間に生じるタイプ2新生血管は通常、それ自体がPEDを生じることありません。
AMDの前駆病変である軟性ドルーゼが増大癒合してできるドルーセ様 (Drusenoid) PEDは非血管性のPEDです。
図では多数の軟性ドルーゼが中心窩付近で癒合して、OCT画像では比較的高反射の無構造の内容のPEDを形成しています。
本来は新生血管を含まないnonvascularized PEDですが、経過とともに脈絡膜新生血管を生じることがあります。
またブルッフ膜に蓄積する脂質によって網膜→脈絡膜への水の排出が阻害されるために、新生血管を伴わずに漿液性PEDを生じることもあります。
その場合、新生血管を欠如するので抗VEGF薬治療は効果がありません。
飯島裕幸: 加齢黄斑変性 臨床の疑問(疑問2) 血管病変を伴わない網膜色素上皮剥離は治療対象か? 眼科 56:629-34.2014