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近視性単純黄斑出血

CNVによる出血と単純黄斑出血

強度近視眼にみられる黄斑部出血には、近視性脈絡膜新生血管myopic CNVによる出血とCNVなしに出血する単純黄斑出血があります。
後者は眼軸長延長に伴うブルッフ膜/脈絡膜毛細血管板複合体の断裂によって生じます。
単純黄斑出血は、白色線条を示すラッカークラックlacquer crackを生じて、長期的には網脈絡膜委縮やCNV発生のリスクはありますが、短期的には出血の吸収で視力は回復するので、CNVによる出血に比較して予後は良好です。
またCNVによる出血に対して行われる抗VEGF薬硝子体注射の必要はありません。
大石明生: Lacquer crackと単純型黄斑部出血. In: 大野京子ほか編: 眼科臨床エキスパート:画像診断から考える病的近視診療. 医学書院, 123-130, 2017.

症例:33歳女性

左目の変視症に気づいて、近視性CNVの疑いで近医から紹介されました。
左目は-16Dの強度近視で矯正視力は0.8でした。
左目の中心窩には小さな出血がみられ、OCT画像では網膜下血腫と考えられます。

フルオレセイン(FA )とICG(IA)蛍光造影検査を施行したところ、CNVはみられませんでした。

そこでCNVによる網膜下出血ではなく、単純黄斑出血と判断して抗VEGF薬の硝子体注射は行わず経過を観察しました。
3カ月後には出血はほぼ吸収され、矯正視力もその3カ月後には1.0に回復しました。

CNV検出とOCTA

抗VEGF薬治療が必要な黄斑出血の診断にはFAによるCNVの確認が必要です。
高反射を示す網膜下のOCT像では単純黄斑出血との明らかな違いは見られませんが、FAではブロックによる出血の低蛍光内に漏出を示す過蛍光がみられ、CNVと診断できます。

OCTAによる診断

このようにこれまで強度近視の黄斑出血の診断と治療方針決定には侵襲的検査であるFAが必須でした。
しかし近年CNVの有無をOCT angiography (OCTA)によって診断することで、FAでの造影剤注射による副作用を回避することが可能となりつつあります。
Miyata M et al.: Detection of Myopic Choroidal Neovascularization Using Optical Coherence Tomography Angiography. Am J Ophthalmol 165: 108-114, 2016.