高血圧症では心臓、腎臓など多くの臓器障害を生じます。
網膜の臓器障害所見ともいうべき網膜出血、軟性白斑、硬性白斑は、脳や心血管障害のリスクに関連していて、降圧治療を考えるべき判断材料となります。
日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019:27頁
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf
図は45歳女性で、左眼の漿液性網膜剥離のために矯正視力は1.0/0.6でした。
血圧は236/157で、内科受診後、高血圧性脳症のため入院加療となりました。
一方、Keith-Wagener分類のⅠ、Ⅱ度に分類される網膜動脈の狭細化や口径不同は、脳や心血管リスクの危険度としてのodds比が2以下で高血圧治療への寄与度は高くはありません。
2004年に発表されたWong-Mitchell分類はmild, moderate, malignantの3段階に分類します。
K-W分類Ⅰ、Ⅱ度はそのmildに当たります。
Wong TY, Mitchell P: Hypertensive retinopathy. N Engl J Med 351: 2310-2317, 2004.
Wong-Mitchell分類は人間ドックでの眼底写真評価にも取り入れられています。
「要精検」と判断するのは、Wong-Mitchell分類のmoderateで、Keith-Wagener分類のⅢ度相当とされています。
日本人間ドック学会: 眼底健診判定マニュアル. 2015
https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/9a0e9dd5b5a9c4b9f151c5b3ad9855c82.pdf
川崎良:高血圧と網脈絡膜循環. 日本の眼科 89: 1362-1367, 2018.
なおK-W分類(慶大変法)のⅡb群はオリジナルのK-W分類のⅡ群のうち網膜静脈閉塞症を生じたものを指します。
視神経乳頭浮腫を生じた高血圧性網膜症はK-W分類のⅣ群、Wong-Mitchell分類の重度(malignant)に相当して、死の危険が迫っている状態です。
図は44歳女性で両眼の見え辛さで受診しましたが、矯正視力は1.5/1.5でした。
血圧は250/155で、即日内科入院となりました。