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星状硝子体症 asteroid hyalosis: AH

多数の黄白色、粒状混濁が硝子体腔内に見られる病態は星状硝子体症asteroid hyalosis:  AHと呼ばれます。
混濁の原因はasteroid body(星状体、星芒体)と呼ばれ、細隙灯顕微鏡や眼底写真で確認できます。
閃輝性融解synchysis scintillansあるいは硝子体閃輝症と呼ばれることもあります。

通常,眼底の透見性は低下するものの,飛蚊症や視力低下などの自覚症状をきたすことはあまりありません。
Khoshnevis M, Rosen S, Sebag J: Asteroid hyalosis-a comprehensive review. Surv Ophthalmol 64: 452-462, 2019.

臨床上問題になる星状硝子体症

眼底像が不鮮明なだけで、網膜に明らかな異常がなく視力が正常なAH眼であれば、それ以上の精査や治療の必要はありません。
臨床上、問題になるのは以下の場合です。
1. 黄斑円孔や網膜上膜(epiretinal membrane: ERM)など視力に影響する黄斑病変を生じたAH
2. 視力は正常でも(前)増殖糖尿病網膜症など治療が必要なAH
3.  AH自体の影響で視力低下や飛蚊症など視覚症状を生じている場合(上記綜説論文ではこれをvision degrading myodesopsiaと呼んでいます)

黄斑病変を伴うAH

AHのために眼底検査や細隙灯顕微鏡検査で診断が困難であっても、黄斑円孔網膜上膜は通常OCT検査で確認できます。
このような症例に対してビトレクトミー手術を行うことには異論はありません。
森秀夫, 明石麻里: 星状硝子体症に対する硝子体手術成績. 眼科手術 32: 284-288, 2019.

視力正常だが網膜治療が必要なAH

レーザー光凝固治療が必要な糖尿病網膜症に合併するAHは少なくありません。
眼底観察が困難であれば、ビトレクトミーで眼底観察を容易にしてからレーザー治療を行う考え方はあります。
しかし、カラー眼底写真では網膜血管の確認が困難な目でも、オプトスなど広角眼底撮影機器によるフルオレセイン蛍光造影検査FAや眼底自発蛍光FAFでは比較的良好な眼底像が得られます。
これを利用して新生血管やレーザー凝固斑を確認し、ビトレクトミー手術治療を回避したとする報告はあります。
Ogino K, Murakami T, Yoshimura N: Photocoagulation guided by wide-field fundus autofluorescence in eyes with asteroid hyalosis. Eye (Lond) 28: 634-635, 2014.

図は軽度の白内障で紹介された矯正視力0.7の81歳男性の右眼底写真(左上)、OCT(右上)、オプトスのR/G写真(左下)と自発蛍光写真(右下)です。

カラー眼底写真では黄斑の詳細は不明ですが、OCTでは問題になるような黄斑病変のないことがわかります。
右下のオプトス自発蛍光では網膜血管の走行もある程度わかります。
本人の右眼視力障害の自覚はなく、0.7の視力は白内障によるものだとして、希望があればPEA/IOLのみ行ってよいと説明しました。

上記3のAH自体の影響による視力低下や飛蚊症などの視覚症状を生じている場合については次回解説予定です。