多数の白点が眼底にみられる夜盲症には表の2つがあります。
日眼用語集第6版で白点状眼底と白点状網膜症と記載される病気は以前の邦語論文でそれぞれ眼底白点症、白点状網膜炎として報告されています。
後者は多数の白点がみられる網膜色素変性の亜型です。
学童期に夜盲を訴えて受診する白点状眼底Fundus albipunctatus (FA)では、黄斑部を除く眼底全体に粒状の無数の白点(赤矢印)が散布されてホロホロ鳥の羽根のようだと形容されます。
白点は斑状(黄矢印)のこともあり、図のように両者が混在することもあります。
白点状眼底の特徴は暗順応速度の遅延で、暗順応曲線の第1相(錐体反応)と第2相(杆体反応)いずれもが正常よりもはるかに延長します。
岡本道香, 岡島修, 飯島裕幸: 眼底白点症 暗順応遅延の時定数による検討. 臨床眼科 37: 483-487, 1983.
また通常の記録法での網膜電図ERGでは、杆体反応の振幅が減弱しますが、2時間以上の長時間暗順応後に記録すると図のように正常振幅に回復します。
このような暗順応時間の遅延に対応して、夜中に目覚めた患者さんは(睡眠中に暗順応されているので)暗い室内の様子がわかると言います。
白点状眼底は常染色体劣性遺伝病で、多くはRDH5の変異が原因です。
視細胞外節に含まれる視物質中の11-cis retinalは、光でall-trans retinalに異性化されますが、図に示すレチノイドサイクルで再利用されます。
その際、RDH5がコードするretinol dehydrogenaseは、網膜色素上皮で11-cis retinol(アルコール)を11-cis retinal(アルデヒド)に変換します。
ただし網膜色素上皮にはRDH11も発現するため、長時間かければ11-cis retinalは再生されると考えられます。
Skorczyk-Werner A et al.: Fundus albipunctatus: review of the literature and report of a novel RDH5 gene mutation affecting the invariant tyrosine (p.Tyr175Phe). J Appl Genet 56: 317-327, 2015.
RDH5の遺伝子異常にはミスセンス変異、インフレーム変異(3個の塩基の挿入によってフレームシフトを起こさない変異)、フレームシフト変異などのさまざまな変異が報告されています。
Nakamura M et al: A high association with cone dystrophy in Fundus albipunctatus caused by mutations of the RDH5 gene. Invest Ophthalmol Vis Sci 41: 3925-3932, 2000.