鈍的眼外傷による主な眼底後極病変には、網膜振盪症commotio retinae、外傷性黄斑円孔traumatic macular hole、脈絡膜破裂choroidal ruptureがあります。
Chen Y et al: Traumatic chorioretinopathies. In: Ryan SJ (Eds): Retina 5th ed. Elsevier 1564-1570, 2013.
このうち脈絡膜破裂は、前後方向に圧縮され元に戻る眼球壁の変形が原因です。
コラーゲン線維に富む強靭な強膜の内側に位置するブルッフ膜及び内層脈絡膜は、急激な変形についていけず、網膜色素上皮(RPE: Retinal pigment epithelium)とともに断裂すると考えられます。
脈絡膜破裂の形は通常、視神経乳頭の同心円に沿う三日月状で、これは眼球変形に抵抗する視神経の支持作用のためと考えられます。
図左の38/M、受傷後10日、RV=(0.1)の眼底写真に見られる白色病変は破裂により生じた線維性瘢痕の色です。
図中央のフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)では漏出蛍光や瘢痕結合組織の組織染のために過蛍光になります。
脈絡膜破裂本体は血管に富む脈絡膜の一部の断裂による組織欠損のため、ICG蛍光造影検査(IA)で低蛍光に映ります(図右)。
受傷直後には網膜、脈絡膜に出血を生じ、そのため脈絡膜破裂の診断が困難なことがあります。
図の症例(31歳男性、右矯正視力0.1)では中心窩と乳頭の間の脈絡膜破裂創が確認できていましたが、網膜下出血の吸収後に中心窩外側にも脈絡膜破裂があったことが確認できました。
脈絡膜破裂症例の視力は破裂の部位、網膜下出血量、続発性の脈絡膜新生血管などに依存します。