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栄養欠乏性視神経症

両目中心視野の障害や視力低下の原因が眼底検査では明らかでない場合、考慮すべき病気のひとつが栄養欠乏性視神経症です。
ビタミンB1、B9(葉酸)、B12など、ビタミンB群の欠乏によって、ミトコンドリアでの電子伝達系におけるエネルギー代謝障害でATP産生が低下することで視神経障害が引き起こされます。
契機としてはアルコール過剰摂取、偏食、拒食症、消化器疾患などがあります。
月井里香, 牧野伸二: アルコール大量接種者にみられた栄養欠乏性視神経症の1例. 眼科 63.2021
Jefferis JM, Hickman SJ: Treatment and Outcomes in Nutritional Optic Neuropathy. Curr Treat Options Neurol 21:5.2019

栄養欠乏性視神経症はそのような病歴を参考とし、血中ビタミン濃度の低値とビタミン補充治療による診断的治療結果を確認して診断されます。

症例Sさん:65歳男性

Sさんは2021年10月頃から左目がかすんで見えにくいと感じ、TVも左目で見ると白黒画面に見えることに気づきました。
近くの眼科を受診して視神経炎の疑いで紹介され、12/1の大学病院眼科初診時の矯正視力は0.8/0.07で、中心10度視野の検査では両目の中心視野の感度低下が見られました。
しかし眼底検査では明らかな異常はなく、頭部造影MRI検査でも視神経の炎症を示す像はみられません
血液検査でビタミンB1とB12が正常下限に近い低値であり、大酒家であるとの家族からの情報提供も考慮して、栄養欠乏性視神経症の診断にて、総合ビタミン剤(ビタメジン)の投与を開始しました。
その結果、血中のビタミン濃度は表のように改善しました。

視野検査結果も図のように改善され、視力も回復しつつあり、アルコール大量摂取によるビタミン不足が原因の栄養障害性視神経症と診断しました。