PAM: primary acquired melanosisは高齢者の結膜にみられる色素沈着で、結膜悪性黒色腫 メラノーマ:結膜MMの前癌状態として重要です。
球結膜(図左)だけでなく、輪部結膜から角膜上に拡がったり(図中央)、眼瞼結膜にみられたり(図右)します。
結膜MMとは異なり厚みはなく腫瘤形成はありません。
組織学的には結膜上皮の基底層に存在するメラノサイトが増生したものです。
そのため免疫組織化学的にはHBM-45, melan A (MART-1), S100蛋白などが陽性となります。
増生したメラノサイトに細胞異型がみられない病期のものはPAM without atypiaと呼ばれます。
一方、明瞭な核小体と腫大した細胞核を示す異型細胞が結膜表層に浸潤するようなものはPAM with atypiaと呼ばれ、メラノーマへの進展リスクが高まります。
加瀬諭. 結膜原発性後天性メラノーシス. In: 眼病理アトラス(眼疾患アトラスシリーズ4): 総合医学社.78-9. 2020
範囲が狭い初期のものでは経過観察となりますが、メラノーマへの進展が疑わしい場合は、生検による病理診断が不可欠です。
病巣全体の切除が困難な場合は色素沈着が密な病巣中央部でincisional biopsyを行います。
取り残した周囲の病変に対して冷凍凝固や術後のMMC点眼を行うことがあります。
Shields JA et al.: Primary acquired melanosis of the conjunctiva: risks for progression to melanoma in 311 eyes. The 2006 Lorenz E. Zimmerman lecture. Ophthalmology 115:511-9 e2.2008
ただし結膜メラノーマに転化するリスクは残るので3-6か月毎の写真撮影による経過観察は必要です。
加瀬諭. 原発性後天性メラノーシス、悪性黒色腫. In: 眼科臨床エキスパート:知っておきたい眼腫瘍診療: 医学書院.279-84. 2015