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眼圧が高くないのに緑内障?

眼科クリニックでよく聞かれる会話です。
患者:[人間ドックで緑内障の疑いと言われましたが、眼圧は右も左も14mmHgで正常範囲でした。眼圧が高くないのに緑内障なのですか?]
眼科医:[緑内障は視神経の病気視野障害が進行し、ついには失明することもある怖い病気です。眼圧が正常範囲の緑内障患者さんも大勢います。]
患者:[しかし緑内障の治療は眼圧を下げる点眼薬や手術だと聞きました。]
眼科医:[そのとおりで、視神経の病気である緑内障の進行を遅らせる最も有効な治療法は眼圧を下げることです。]
この会話の患者さんが抱いた疑問は多くの患者さんも感じていると思います。

視神経乳頭陥凹拡大で発見される緑内障

人間ドックや健康診断で撮影される眼底写真)で血管が集まる白い丸は視神経乳頭と呼ばれ、網膜から脳に信号を伝える神経線維の出口です。
黒矢印で示す視神経乳頭の縁のリムと呼ばれる部分が狭くなり、その内側の窪みが拡大して視神経乳頭陥凹拡大と判定されると、緑内障の疑いとして要精検の通知をもらいます。
その際眼圧が高いかどうかは問われません。
この写真では、狭くなったリムに連絡する網膜内の神経線維層の厚みが減って、暗い刷毛状にみえる神経線維束欠損(NFLD)の所見も白矢印で示されています。

緑内障は視野検査とOCTで診断される

人間ドックなどから紹介されてきた緑内障疑いの患者さんが眼科クリニックを受診すると、視力、眼圧、細隙灯顕微鏡検査、隅角検査、眼底検査に加えて視野検査を行います。
緑内障では鼻側階段ブェルム暗点など特徴的な視野変化がみられます。

最近は視野の所見だけでなく、網膜の断面を観察する光干渉断層計(OCT: optical coherence tomography)検査の結果も参考にします。
緑内障の目では網膜の最表層に位置する神経線維層が菲薄化するのが特徴です。
図の上段の正常眼では、網膜の表層に白矢印で示す均等な厚みの神経線維層が見られますが、下段の進行した緑内障眼では矢印の位置でみられるはずの神経線維層がほとんど確認できません。
図のOCT画像は黄斑部分の断面像ですが、視神経乳頭の周りを一周するリング状での断面で神経線維層の厚みを自動診断するプログラムもあります。

目標眼圧を超えないように治療することで緑内障の進行を抑える

緑内障で失われた神経線維を回復させる治療はありません。
そこで神経線維の脱落を抑えて、視野の悪化速度を遅らせることが緑内障の治療になります。
多くの患者さんが参加した大規模臨床試験の結果、眼圧が下がれば視野の進行が遅くなることが証明されました。
CNTGS Group (1998). “Comparison of glaucomatous progression between untreated patients with normal-tension glaucoma and patients with therapeutically reduced intraocular pressures. Collaborative Normal-Tension Glaucoma Study Group.” Am J Ophthalmol 126(4): 487-497.
その結果を受けて、個々の患者さんに対して目標眼圧を設定し、それを超えないように点眼、内服、レーザー、手術などの眼圧を下げる治療が行われます。