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RVO黄斑浮腫眼、硝子体注射の出口戦略

抗VEGF薬硝子体注射の目的

網膜内科医https://meisha.info/archives/3117が行う治療の主役は、以前のレーザー光凝固治療から抗VEGF薬の硝子体注射に代わってきました。
その目的は新生血管の退縮(滲出型加齢黄斑変性AMD)と黄斑浮腫の消退(網膜静脈閉塞症BVO:CRVOとBRVO)です。

出口戦略

滲出型AMDでは注射で退縮した新生血管の再増殖による再発リスクがあるため、治療の[終わり]がみえずPRNやTAEなどの反復注射の戦略が実践されています。
これに対してRVO黄斑浮腫の元々の原因は血栓による静脈閉塞なので、本来[終わり]のある病気です。
そのため浮腫の再発を繰り返すケースであっても[いつまで注射治療を続けるか?]は治療医の考え方によって異なります。

症例:80歳女性

Kさんは2年前に右眼のCRVOによる黄斑浮腫で近医A眼科抗VEGF薬(ルセンティス)の硝子体注射を受けました。
注射後の矯正視力は0.5でみやすくなったもののその後再発したため、セカンドオピニオン目的B眼科受診し、C総合病院を紹介されました。
C病院では繰り返す黄斑浮腫の再発のため5回注射(アイリア)を受けましたが、浮腫が吸収されても矯正視力は0.5程度でした。
Kさんは注射を繰り返すことが苦痛で大学への紹介を希望されました。

大学での診療

大学初診時の右矯正視力は0.5、右眼底は軽度の静脈蛇行がみられ、600µm程度の軽度~中等度の黄斑浮腫がみられました。
残存する黄斑浮腫は抗VEGF薬注射で一時的に消失させることができますが、[前医での注射で浮腫が消失しても見え方の改善は自覚できなかった]というKさんの言葉もあり、注射は行わず定期的な経過観察のみ行う方針としました。

残存黄斑浮腫と再注射判断

RVO黄斑浮腫に対する抗VEGF薬硝子体注射に関する大規模スタディで、当初は再注射の条件に黄斑浮腫による網膜厚の測定値が求められていましたが、その後視力の変化のみが再注射の判断材料になってきています。
飯島裕幸:網膜静脈閉塞症の疑問(疑問12) 抗VEGF剤の再注射,追加注射はどのように決めるべきか? 眼科 60:633-7.2018
浮腫が再発残存していても視力が不変であれば追加注射は行わず経過みるのがよいのではないかと思います。