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成熟白内障

白内障が進行すると透明水晶体の混濁度が増加します。
その進行程度を表現する言葉として、初発、未熟、成熟、過熟という言葉が使用されます。
またそれ以外に色やサイズ、水晶体内部構造の変化を表す、褐色白内障や膨隆白内障、モルガーニ白内障などの呼称もあります。

真っ白 であれば成熟白内障か?

インターネットで成熟白内障を調べてみると[真っ白に濁った水晶体]という記載が目につきます。
しかし[真っ白]という表現は多分に主観的で、どこまでの白さをいうのかあいまいです。
眼科の教科書で成熟白内障を調べると、白色という色の記載ではなく、[完全な混濁][透明部分がない][虹彩陰影の消失]などと記載されています。

教科書での定義

水晶体全体が完全に混濁した状態。(医学書院、標準眼科学、第14版、2018年)
混濁が水晶体全体にわたり、眼底が透見困難な状態のものをいう。混濁は嚢直下まで達するため虹彩陰影は認められない(金原出版、現代の眼科学、第13版、2018年)
進行し透明部分がなくなってきた状態を成熟白内障と 呼ぶ。(文光堂、眼科学、第3版、2020年)
成熟白内障は水晶体皮質がほぼすべて混濁したものである。(メディカル葵出版、眼科学、2005年)

透明部分の残存は細隙灯顕微鏡で確認できる

完全な混濁ではなく透明部分が残っていれば、昔の[斜照法]では虹彩の影が水晶体内部にできます。
そのような場合、細隙灯顕微鏡のスリット光を細くすれば、図左の未熟白内障で観察される水晶体後嚢は見えなくても、前嚢下で水晶体断面の一部が観察できるので(図中央)、成熟白内障とは呼べないことになります。
白の碁石のように細隙光が内部に進入できない状態(図右)を成熟白内障と呼ぶべきでしょう。