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色素性傍静脈脈絡膜網膜萎縮PPCRA

網膜静脈周囲に限局する網膜色素変性

眼底が網膜色素変性によく似ていますが、黒色色素沈着や網膜色素上皮RPEの萎縮が、網膜静脈周囲に限局して拡がる病態はpigmented paravenous chorioretinal atrophy: PPCRA色素性傍静脈脈絡(膜)網膜萎縮と呼ばれます(邦語訳は脈絡膜網膜萎縮、脈絡網膜萎縮、網脈絡膜萎縮などさまざまで確定しておらず日眼用語集第6版にも未掲載)。
須藤希実子, 堀田喜裕:眼科臨床エキスパート、網膜変性疾患診療のすべて: 医学書院.275-8. 2016

症例

図は眼底検査で偶然に異常を指摘された40歳女性の両眼の写真とフルオレセイン蛍光眼底造影写真 FAです。
左上のFAは右眼(図中央)の黄色点線の範囲に対応しますが、網膜色素上皮の萎縮で顆粒状過蛍光を示す白い部分は、網膜静脈の枝周囲に限られ、動脈枝周囲は正常背景蛍光です。

PPCRA多数例の報告

PPCRAはこれまで少数例のケーススタディとして国内外から散発的に報告されてきましたが、比較的まとまった数の症例が最近2つの施設から報告されました。
欧米の症例:Moorfields Eye Hospital 23例
Shona OA et al.: Pigmented Paravenous Chorioretinal Atrophy: Detailed Clinical Study of a Large Cohort. Retina 39:514-29.2019
アジア人の症例:ソウル大学 25例
Lee EK et al.: Pigmented Paravenous Chorioretinal Atrophy: Clinical Spectrum and Multimodal Imaging Characteristics. Am J Ophthalmol 224:120-32.2021
これらの報告では以下の点が指摘されています。

PPCRAの臨床所見

1. 多くは孤発例で家族歴はない
2. 視力は正常か軽度低下程度(ただしアジア人では黄斑部に異常が及んで視力低下した眼が26%いた)
3. 夜盲を訴えるケースもみられるが、無症状が多く、健診などで偶然に眼底異常を指摘される例が多い。
4. 進行は明らかではない(少数例では数年~十数年の経過で眼底所見、視野障害が進行)。
5. ERG検査では杆体系、錐体系ともに種々の程度の振幅低下がみられる。
6. 眼底病変の広がりやERG振幅は両眼間で非対称が少なくない。

以上からPPCRAの病因に関して炎症、変性、遺伝などが混在する可能性が考えられます。