• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

白内障 VS 老視

[最近見えにくくなった]と訴えて眼科を受診する高齢の患者さんの多くは、白内障老視(老眼)です。
老視の見えにくさは近用眼鏡(老眼鏡)遠近両用メガネ(累進屈折力メガネ)で解決しますが、
白内障の見えにくさは手術でなければ解決しません。

老視は近方の文字のボヤケ

老視は手元にピントを合わせる機能である調節力が衰える正常な加齢現象です。
裸眼、あるいは度の合ったメガネをかけた状態で、5メートル先の視力表で測る遠見視力は良好ですが、30センチメートルの距離の近見視力が不良になります。
日常生活でも、TVの字幕は読めるのに、新聞やスマートフォンの文字がぼやけて読めないと訴えます。

白内障は水晶体の濁りによるかすみ

一方、白内障は眼球内部の透明なレンズである水晶体の濁りが原因です。
原因の多くは加齢性で高齢者に多く見られます。
水晶体の断面を拡大して観察する細隙灯顕微鏡検査では、水晶体の断面に白い濁りがあり、しかもそれが瞳孔の中央に及んでいます。

見えにくさの感じは[ボヤケ]というよりは、すりガラスや霧を通して見える[かすみ]のイメージです。
そのため遠見視力近見視力も低下します。
屋外でのまぶしさも初期の白内障ではよくみられます。

白内障と老視のいずれが主因か?

白内障の手術目的で大学病院に紹介されてくる患者さんの中には、見えにくさの主な原因が白内障ではなく老視と考えられる患者さんが混じっています。
その場合、手術はせずに適切な老眼鏡をかければ患者さんの見えにくさは解決します。
白内障と老視を鑑別するには、[TVと新聞のどちらが見えにくいですか?]と質問します。
両方見えにくければ白内障、TVを見るのは不自由ないが新聞が見にくいのであれば老視と考えられます。

通常の白内障手術では完全な老視になる

また他院で受けた白内障の手術後、症状の改善がない、あるいはかえって悪くなったと訴える患者さんもいます。
診察では白内障手術の術後として問題なく、裸眼での遠見視力は1.0です。
そのような場合、術前の見えにくさが白内障ではなく老視であった可能性があります。
通常の白内障手術で移植する眼内レンズには調節機能はなく術後は完全な老視状態になるので、老眼鏡なしでは近くの文字は読めません。
メガネなしで手元の文字が読めることを患者さんが期待していたのであれば、手術でかえって見えにくくなったと感じるのも無理はありません。