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眼球摘出術と眼窩内容除去術

眼球摘出術

眼球内の網膜で捉えられた外界の像は、視神経を経由して脳の後頭葉に伝えられ、初めて視覚情報として自覚され、[見えた]と感じます。
眼球摘出術はこの脳との連絡路である視神経を切断して眼球を取り出す手術です。

眼球摘出術の主な目的は以下のごとくです。
1. 眼球内に限局している重症感染(眼内炎)や悪性腫瘍(網膜芽細胞腫や脈絡膜悪性黒色腫)が脳など眼球外に拡散するのを防止する
2. 眼球破裂など修復不能な高度の眼球損傷へのやむを得ない処置
3. 眼圧上昇による目の激痛から逃れる最終手段
4. 献眼のご遺志のあったご遺体から移植用の提供角膜を採取するため
眼球を摘出した後は義眼台を固定し、その上を結膜で覆います。
上下の眼瞼の間は結膜嚢で囲われるスペースとなり、そこに義眼を収納することで外見を整えます。

眼窩内容除去術

一方、眼球を含む眼窩内容をすべて切除する手術は眼窩内容除去術と呼ばれ、眼窩内に浸潤した眼瞼悪性腫瘍(脂腺癌や基底細胞癌など)や放射線治療適応ではない眼窩悪性腫瘍などが対象です。
露出させた眼窩骨壁面に皮膚を移植しますが、眼瞼と結膜嚢で形成されるスペースを欠くために義眼は装用できません。
代わりにエピテーゼと呼ばれるシリコン製の造作物を装着して外見的に整えることになります。
飯渕顕他: 眼窩内容除去術を施行した眼瞼悪性腫瘍の3例. 臨床眼科 76:939-44.2022