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Herringの法則とHess赤緑試験

Herringの法則

右方視や左方視、上方視、下方視のように両眼が同じ方向を向く眼球運動は[むき運動]で、その際に働く両側の外眼筋を[ともむき筋]と呼びます。
たとえば右方視の際の右:外直筋と左:内直筋の組み合わせ、右上方視の際の右:上直筋と左:下斜筋の組み合わせです。
Herringの法則とは[ともむき筋]に送られる神経インパルスの量が等量であることをいいます。
その結果、正常では9方向眼位いずれにおいても両眼の視線が目標で一致するので複視を生じません。
一方で複視を生じる多くの眼筋麻痺で、ヘスチャートの[田の四角]が麻痺眼で縮小し非麻痺眼で拡大することhttps://meisha.info/archives/4863は、このHerringの法則から説明されます。
植木智氏志: 複視の診察法【複視を診たらどうするか】. OCULISTA:1-4.2017

右眼の外転神経麻痺

右の外転神経麻痺では緑ガラスを麻痺眼の右眼に装用すると左図右のように[田の四角]が右方向で縮小し、非麻痺眼の左眼に装用すると左図左のように右方向で拡大します。
その機序を以下に説明します。

麻痺眼で縮小する[田の四角]

上図ヘスチャートの右の緑矢印、すなわち右眼に緑ガラスを装用して[田の四角]の右辺中点を指し示している様子は下図右のごとくです。
右辺の中点は非麻痺眼の左眼で見ますが(図の赤点線矢印)その際の左眼の内直筋の収縮は①の量です。
この収縮を得るための神経インパルスは青の矢印のように左右同じ量ですが、右の外転神経が麻痺しているため、右の外直筋の収縮量は②のように①よりも小さく、そのため緑矢印は右辺まで到達せず、[田の四角]の左辺近くを指すことになります(図の緑点線矢印)

非麻痺眼で拡大する[田の四角]

一方図左のように麻痺眼の右眼に赤ガラスを装用させると、外転神経麻痺の右眼で右辺の中点をみる(図の赤点線矢印)ためにはるかに大きな神経インパルス(図の青実線矢印)が必要です。
Herringの法則ではその同じ量の神経インパルスが左眼の内直筋に作用するために、緑点線矢印ははるか右方にオーバーシュートして[田の四角]は右に拡大します。