涙小管炎の代表的所見は拡張した涙点周囲の発赤腫脹と多量の膿、周囲結膜の充血、眼瞼腫脹などで、中高年の女性に多くみられます。
傷ついた涙小管粘膜での慢性の細菌感染によって菌石(涙石、菌塊)が涙小管内に形成され、抗菌薬点眼に抵抗する頑固な眼脂が持続します。
原因菌としては嫌気性の放線菌であるActinomyces israeliiが代表的です。
涙管通水検査では膿の逆流はありますが、通水は可能です。
治療は綿棒による圧迫や涙点の切開による菌石の完全な排出です。
特別養護老人ホーム入所中で、8カ月前から左眼の充血がみられていました。
近医を受診して結膜腫瘍の疑いで大学病院を紹介されました。
左の上下涙点周囲の結膜が著明に発赤腫脹し、白色の膿が貯留していました。
涙管通水検査では大量の白色膿があふれるものの通水は可能でした。
鋭匙にて拡張した涙点から菌石を掻き出したところ2週間後には発赤腫脹は軽快しました。
膿の鏡検では白血球のみで細菌は培養されませんでした。
残念ながら菌石の培養検査は提出はされていません。
2023年の眼科専門医試験、臨床問題No43に涙小管炎の写真が出題されています。
処置に使用する器具としてe. の11番メス(尖刃刀)は涙点切開に使用するので正解ですが、菌石を掻き出す鋭匙がd. なのかc. なのか写真が小さくて判断できません。