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コロボーマ

眼球発生の基となる第一次眼胞primary optic vesicleは胎生3週頃に神経外胚葉から生じます。
その後、眼胞は陥凹して内外2層から成る眼胚(第二次眼胞)optic cupを形成し、内板は神経網膜に、外板は網膜色素上皮(RPE)に分化します。
眼胚腹側は当初裂け目になっていて眼胚裂fetal fissureと呼ばれ、中胚葉とともに硝子体動脈が侵入しますが、胎生6週頃には閉鎖します。
現代の眼科学第12版: 金原出版. p.17. 2015
眼胚裂の閉鎖が障害されると虹彩や脈絡膜の下方の一部が欠損してコロボーマcolobomaと呼ばれる先天異常を生じます。

虹彩コロボーマ

下方の虹彩の一部が欠損するため、瞳孔の下縁が滴状を示します(図A)

脈絡膜コロボーマ

典型的には視神経乳頭下方で脈絡膜が欠損するため白色の強膜が透見されますが、透明な網膜内の血管は観察できます(図B)
脈絡膜コロボーマは視神経乳頭を含んでみられることもあります(図C)

2023年の眼科専門医試験

2023年の眼科専門医試験、臨床問題No30では上図Cに類似する視神経乳頭を含む下耳側の脈絡膜コロボーマの写真が示されていて、超音波Bモード写真では眼球後壁が陥凹しているようすが示されています。
脈絡膜コロボーマは網膜剥離の発生に気を付ける必要がありますが、特別の治療は不要でa. の経過観察が正解だと思います。
ただし染色体異常やPAX6遺伝子異常でコロボーマを生じたとの報告もあるので、b. 遺伝子検査もあながち不正解とはいえないかもしれません。