眼科診療所に通う多くの緑内障患者さんの診断のきっかけは、健康診断や人間ドックの眼底写真での視神経乳頭陥凹拡大です。
視神経乳頭は眼底写真に写る白い円盤で、正常でも中央が少し陥凹して白っぽく見えます。
その拡大はどのような意味があるのでしょうか?
網膜の表層には網膜神経節細胞があって、視細胞からの視覚信号を伝えています。
その軸索である網膜神経線維は、網膜表面を走って視神経乳頭に集まり、眼球の壁である強膜の穴から外に出て視神経となります。
視神経は眼窩から視神経管を通って頭蓋内に入り、視覚に関する信号を脳に伝えます。
網膜神経線維が視神経乳頭のへりで方向を変える部位は、土手のように盛り上がりリムと呼ばれます。
そのリムに囲まれた中央のへこみが視神経乳頭陥凹として観察されます。
緑内障は網膜神経線維が進行性に脱落する病気です。
そのため視神経乳頭のリムを通過する線維が減少しリムの幅が狭くなります。
結果としてリムに囲まれた乳頭陥凹が拡大して見えます。
この所見は緑内障性視神経乳頭陥凹拡大と呼ばれ、緑内障と診断する根拠のひとつです。
図では視神経乳頭陥凹のエッジを矢印で示しています。
神経線維が脱落すると対応する視野は障害されますが、ゆっくりした進行なので通常、患者さんは自覚しません。
視神経乳頭陥凹拡大と判定された患者さんは[緑内障の疑い]として眼科診療所を受診するよう指示されます。
そこで視野検査を行い異常が確認されると緑内障と診断されます。