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頭痛を伴わない閃輝暗点

視力視野の一時的な障害

視力や視野の一時的な障害は、片目であれば一過性黒内障発作を疑います。
粥状動脈硬化の頸動脈から飛来した血栓が、内頸動脈、眼動脈を経由して、片目の網膜中心動脈を一時的に閉塞して見えなくなるものの、血栓がくずれて再開通することで視覚が回復する症状です。
血栓が崩れずに永続すれば網膜中心動脈閉塞症(CRAO)で高度の視覚障害となります。
同じような一過性の視野障害が両目に起こる場合は閃輝暗点の可能性が高いです。

閃輝暗点

閃輝暗点片頭痛に伴ってみられる前兆です。
坂井文彦. 片頭痛からの卒業: 講談社:講談社現代新書2478. 2018
典型的な場合は視野の一部から始まるジグザグ模様が光りながら拡大して(閃輝)、その部分は見えなくなり(暗点)、場合により視野全体を覆うこともあります。
この前兆は一時的で回復しますがその後、激しい片頭痛に襲われ、一眠りすると痛みからも回復します。
その様子は芥川龍之介の短編「歯車」に詳細に描写されています。
また閃輝暗点を体験した神経学者によって、光る暗点の進行過程をスケッチした図がその著書に記されていて、左図のようなものです。
赤の二重丸は固視点で上段の左、中央、右と進行し、最後に下段のように暗点が拡大しました。
ただし私が患者さんから聴取した閃輝暗点はこのような円形ではなくブーメランのうような弧状のことも多いようです。

皮質拡延性抑制

閃輝暗点はMRIによる研究で、後頭葉表面で交互に起こる興奮と抑制が水面の波紋のように拡がる「皮質拡延性抑制」が原因であることがわかってきています。

Hadjikhani N et al.: Mechanisms of migraine aura revealed by functional MRI in human visual cortex. Proc Natl Acad Sci U S A 98:4687-92.2001

症例

車を運転中に両目が見えなくなり、脇に停車して待ったところ10分くらいで回復したという84歳の男性が紹介されてきました。
過去3年間に同じようなエピソードが2回あり、今回が3回目でした。
両眼IOL眼で矯正視力は1.5/1.5、眼底を含め眼球内には異常はありません。
8カ月前の2回目の発作の際にMRAを含めた脳のMRI検査を行い、異常なしとされています。
3回の発作の状況について詳しく尋ねた結果の要点は右のごとくです。

診断:頭痛を伴わない閃輝暗点

拡大する暗点は暗くはなく白いこと、両眼性、10-30分で回復するなどの特徴から前兆のある片頭痛にみられる閃輝暗点と診断しました。
ただし視覚障害の後にみられるはずの片頭痛はありませんでした。
国際頭痛分類第2版(ICHD-Ⅱ)の「1.2前兆のある片頭痛」には「1.2.1.典型的前兆に片頭痛を伴うもの」以外に「1.2.3.典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの」が含まれていて、これに該当すると診断しました。
https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/075-113_2-1.pdf