Leber遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy: LHON)またはレーベル病は、電子伝達複合体をコードするミトコンドリア遺伝子の異常によって、網膜神経節細胞(RGC) が アポトーシスを生じる遺伝性視神経症です。
主要な3種類の異常はいずれも母親に由来するミトコンドリア遺伝子のため母系遺伝形式をとります。
上田香織: Leber遺伝性視神経症の発症メカニズム. 神経眼科 36:162-8.2019
臨床的には以下の特徴が重要です。
1. 急性~亜急性で無痛性の視力低下と中心暗点、数週~数カ月のインタバルで他眼にも発症
2. 急性期には視神経乳頭の発赤腫脹や毛細血管の拡張蛇行がみられるが、フルオレセイン蛍光眼底造影写真では蛍光漏出を欠如
3. 急性期のCT/MRI画像で眼窩~頭蓋内視神経の異常の欠如
4. ミトコンドリア遺伝子のミスセンス変異(下記の3つが主要なもの、この表の結果ではミトコンドリアDNAの11778番目のグリシン:Gがアラニン:Aに変異していた)
Leber病は若年(10-20代)の男性に好発します。
視神経炎と異なり対光反応の異常が軽微であること、中心フリッカーの異常が軽度にとどまることが特徴です。
その理由として、対光反応に関係するメラノプシン含有のipRGC(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell内因性光感受性網膜神経節細胞)及び中心フリッカーに関係するParasol細胞からのM経路が障害されにくいとの説があります。
中村誠: Leber遺伝性視神経症認定基準. 日本眼科学会雑誌 119:339.2015
RGCの眼球外の軸索/髄鞘が炎症によって障害される視神経炎では、一過性の光反応性を示すM経路や対光反応に関わるipRGCが障害されやすいため、中心フリッカーや対光反応の異常が特徴的です。
一方、眼球内の網膜神経節細胞自体の障害であるLeber病では、多数を占めるMidget細胞の障害が前面に出るため、中心フリッカーや対光反応の異常が軽微だと考えられています。
中尾雄三: 視神経疾患の新たな考え方 原発病変部位・病因・視機能障害. あたらしい眼科 35:69-77.2018
網膜神経節細胞は以下の表のように分類されています。
三好智満. 網膜神経節細胞とその役割はなにか?. In: 若倉雅登, 三村治, eds. 視覚と眼球運動のすべて: Medical View.38-47. 2007