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先天性外眼筋線維症CFEOM

先天眼瞼下垂には片眼性と両眼性があり、いずれも眼瞼挙筋腱膜ではなく筋自体の委縮、線維化で筋力が低下することが原因です。https://meisha.info/archives/1083
加齢性(腱膜性)眼瞼下垂とは異なり、多くは挙筋機能が4mm以下と不良です。
そのために手術は腱膜修復(縫着)術ではなく、前頭筋吊り上げ術が一般的です。

多くの先天眼瞼下垂では眼球運動は正常ですが、上転が制限され眼球が下方視で固定される患者さんの場合は、以前general fibrosis syndromeと呼ばれていた先天性外眼筋線維症CFEOM: Congenital fibrosis of the extraocular musclesの可能性があります。
眼瞼下垂だけでも顎上げの異常頭位を取りやすいのですが、CFEOMでは下方視固定の眼位のために極端なチンアップ頭位が特徴的です。
主な病型は3つありCFEOM 1型は常染色体優性遺伝で、親子でみられることがあります。写真は上が母親で下が娘さんです。

チューブリンとキネシン

CFEOM 1型の原因遺伝子はKIF21A、CFEOM 3型はTUBB3で、それぞれキネシン様蛋白とβ3チューブリン蛋白をコードします。
チューブリンは細胞骨格のひとつである微小管を構成する蛋白で、キネシンは微小管上を移動するモーター蛋白です。
胎生期に動眼神経など脳幹にある眼運動神経核の神経細胞から軸索が伸長する際、チューブリンから成る微小管にモーター蛋白であるキネシンが結合する必要があります。

CFEOMのメカニズム

KIF21Aでコードされるキネシン様蛋白は軸索の伸長端(growth cone)での制御と安定化に重要な役割を果たします。
van der Vaart B et al.: CFEOM1-associated kinesin KIF21A is a cortical microtubule growth inhibitor. Dev Cell 27:145-60.2013
またCFEOM 3型のヒトβ3チューブリン変異体を発現させた培養神経細胞で、変異チューブリンがキネシンとの相互作用を阻害していることが報告されました。
https://www.riken.jp/press/2016/20160118_2/
Minoura I et al.: Reversal of axonal growth defects in an extraocular fibrosis model by engineering the kinesin-microtubule interface. Nat Commun 7:10058.2016

この結果からCFEOMは軸索伸長に関わる蛋白の異常で胎生期の眼運動神経発達が障害されて生じる一種の神経原性筋委縮である可能性が考えられます。
実際、患者さんの眼窩MRI像では眼瞼挙筋も含めた外眼筋の委縮が見られます。

手術治療

各外眼筋は同様に委縮するのではなく、上図では動眼神経の上枝が連絡する上直筋と眼瞼挙筋(黄矢印)の委縮が著明です。
下直筋(赤矢印)は上直筋に比べて委縮の程度は軽度ですが、上直筋の麻痺により拘縮線維化していると考えられます。
そこで手術ではまず拘縮している下直筋の後転または切腱術によって眼球の可動性を改善し、眼瞼下垂の手術はその後に検討することになります。

清水聡子. 外眼筋線維症. In:知っておきたい神経眼科診療: 医学書院.262-6. 2016