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ヒドロキシクロロキン網膜症

全身性エリテマトーデス:SLE

全身性エリテマトーデス(SLE: Systemic Lupus Erythematosus)は皮膚や関節、腎臓など多臓器に障害をもたらす難病です。
日本には難病登録された患者さんが6万人以上います。

ヒドロキシクロロキン(プラケニル)

抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンには抗炎症作用や免疫調整作用があり、欧米での治療ガイドラインではSLEおよび皮膚エリテマトーデスの標準的な治療薬です。
日本においては長らく未承認でしたが2015年から使えるようになり、膠原病内科や皮膚科での使用が増えつつあります。

ヒドロキシクロロキン網膜症

ヒドロキシクロロキンは1960-70年代に失明に至る薬害https://meisha.info/archives/1380で社会問題となったクロロキンの毒性を抑えた薬です。
クロロキンほどではありませんが、長期投与の副作用として同様のヒドロキシクロロキン網膜症を生じます。
そのため使用開始前の眼科での精密検査と、使用開始後の少なくとも1年ごとの眼科検査が必要です。
https://www.gankaikai.or.jp/tsushin/files/20170124_1.pdf

傍中心窩parafoveal型と中心周辺pericentral型

欧米から報告されたヒドロキシクロロキン網膜症の多くはbull’s eyeと呼ばれる中心窩周囲2-6度の範囲のparafoveal型です。
しかしそれよりも周辺の、中心窩から8度以上離れたpericentral型ではより進行した状態で発見されることが多く注意が必要です。

しかもそのようなpericentral型は白人患者では少数派(2%)ですが、アジア系人種では50%とメジャーであることが報告されました。
Melles RB, Marmor MF: Pericentral retinopathy and racial differences in hydroxychloroquine toxicity. Ophthalmology 122: 110-116, 2015.

異なるparafoveaの範囲

Gassのテキストには直径5.5mmの黄斑の区分が図のように定義されています。
Gass JDM. Stereoscopic atlas of macular diseases diagnosis and treatment 4th ed. Vol. 1 2-3 (Mosby-Year Book, 1997).
fovea 中心窩:直径1.5mm
parafovea 傍中心窩:直径2.5mmの円内の外側0.5mm幅
perifovea 周中心窩:直径5.5mmの円内の外側1.5mm幅
中心窩から2-6度の範囲とされているヒドロキシクロロキン網膜症のparafoveal型の輪状部位は直径1.2mmと3.6mmの同心円の間になり範囲が異なります。

韓国からの報告

アジア系人種でpericentral型が多いことは2020年の韓国からの報告でも明らかとなりました。
平均13年(3.5-24年)のヒドロキシクロロキン投与を受け、1年ごとの眼科検査で発見されたヒドロキシクロロキン網膜症患者の投薬中止後の病変の進行を調べた臨床研究です。
なんと80眼中3/4の60眼がpericentral型でした。
投薬中止時に中等症(OCTで視細胞の変化が半周以上)であった目では80%が中止後も進行したとされています。
さらに投薬中止時に網膜色素上皮の異常を伴う重症例では、病変は求心性にも進行して視力障害の危険性が心配されるとされています。
Ahn SJ, Seo EJ, Kim KE, Kim YJ, Lee BR, Kim JG et al.: Long-Term Progression of Pericentral Hydroxychloroquine Retinopathy. Ophthalmology, 2020.