• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

網膜色素線条ASと弾性線維性仮性黄色腫PXE

視神経乳頭から放射状に延びてひび割れ状に拡がる暗褐色の血管様のスジが、人間ドックの眼底撮影で偶然に発見されることがあります。
これは網膜色素線条angioid streaks: ASと呼ばれ、網膜色素上皮の下層のブルッフ膜の断裂が原因です。
断裂したブルッフ膜の上の網膜色素上皮は失われるので眼底自発蛍光検査(図右)では無蛍光https://meisha.info/archives/744線条となります。

症状がなくても全身精査

網膜色素線条の目は脈絡膜新生血管による黄斑部出血を生じて高度に視力が低下することがありますが、黄斑部合併症を生じなければ通常は視力は良好で無症状です。
しかし症状がなくても、精査が勧められます。
それは網膜色素線条患者の半数以上に生命予後にかかわる全身合併症がみられるためです。
Chatziralli I et al.: Angioid streaks: A comprehensive review from pathophysiology to treatment. Retina 39: 1-11, 2019.

弾性(弾力)線維性仮性黄色腫:PXE

中でも多数を占めるのが弾性(弾力)線維性仮性黄色腫:PXE (pseudoxanthoma elasticum)で、Groenblad Strandberg 症候群とも呼ばれます。
([弾性] VS [弾力]に関して:下記ガイドラインでは弾性線維性仮性黄色腫、日眼用語集第6版では弾力線維性仮性黄色腫)
その確定診断は
①特徴的な皮膚病変(あるいは皮膚の病理検査での弾性線維石灰化をともなう変性)があり、
②眼底検査で網膜色素線条がみられる
の2点を満たすことです。https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PXE_GL2017.pdf

皮膚病変

PXEの皮膚病変は頸部や腋窩,肘窩,鼠径部,臍周囲などにみられる黄白色調丘疹や局面です。
このうち頸部の病変は眼科医であっても確認できます。
見た目は鶏肉の皮のようです。

皮膚科、内科連携

眼底検査と眼底自発蛍光で網膜色素線条が診断され、頸部皮膚に特徴的な病変がみられるケースは、皮膚科にコンサルトしてPXEの診断を確定します。
PXEでは皮膚以外に弾性線維を多く含む大血管や消化管の臓器障害を生じて、心筋梗塞、下肢動脈病変による間欠性跛行、消化管出血などのリスクがあるので、循環器内科消化器内科と連携して経過観察することになります。