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原田病(VKH)の白髪と夕焼け状眼底

フォークト―小柳―原田病(VKH)

スイス人のAlfred Vogt小柳美三原田永之助の3人が別個に発見して報告したフォークト―小柳―原田病(Vogt-Koyanagi-Harada disease)は3人の頭文字をとってVKHと呼ばれます。
VKHに特徴的な滲出性網膜剥離は眼科開業医だった原田永之助によって詳しく報告されたので、単に原田病とも呼ばれます。

汎ぶどう膜炎

VKHは非感染性のぶどう膜炎で、ぶどう膜は血管とメラニン色素に富む虹彩、毛様体、脈絡膜を合わせた組織をさします。
前部ぶどう膜の虹彩と毛様体と後部ぶどう膜の脈絡膜のいずれにも炎症がみられるので汎ぶどう膜炎に分類されます。
VKHの最大の特徴は両眼がほぼ同じ時期に発症することです。
非感染性の汎ぶどう膜炎に属するベーチェット病サルコイドーシスも両眼性ですが、発症が両眼同時ということはありません。

VKHの眼外症状

VKHのもう一つの特徴は、急性期に頭痛耳鳴りなどの眼外症状を示すことです。
さらに眼の症状が始まってから数か月経過すると、白髪が急に増えます。
また髪の毛だけでなく、皮膚にも色素が抜けた白斑がまだらにみられるようになります。

色素脱失と夕焼け状眼底

この時期に患者さんの眼底を観察すると、正常では暗赤色の眼底が夕焼けの空のように明るい赤色にみえます。
これは夕焼け状眼底と呼ばれます。
原田病の慢性期にみられる白髪、皮膚白変、夕焼け状眼底に共通するのは色素脱失です。

VKHはメラニン産生細胞に対する自己免疫疾患

VKHでは眼、皮膚、髄膜、内耳に炎症を生じます。
いずれにもメラニン色素を作るメラノサイトという細胞が存在します。
VKHは自己のメラノサイトを標的として免疫系が過剰反応する自己免疫疾患です。
虹彩と毛様体での炎症で前房や硝子体内に出てきた白血球は細隙灯顕微鏡で観察できます。
また炎症で透過性が亢進した脈絡膜血管からは、蛋白に富む血漿が漏出して滲出性網膜剥離を起こします。
https://meisha.info/archives/1017

皮膚白変、白髪と夕焼け状眼底

脳の表面を覆う髄膜での炎症で頭痛を生じ、内耳の炎症によって耳鳴りがします。
皮膚での炎症は急性期には目立ちませんが、標的のメラノサイトが脱落すると表皮細胞にメラニン色素を供給できなくなるため、発症から数か月すると皮膚の白斑がみられます。
髪の毛のメラニン色素も欠乏すると白髪がみられます。
黒髪が急速に真っ白になるさまは、玉手箱をあけて白髪のおじいさんになった浦島太郎のモデルになったといわれています。
夕焼け状眼底は脈絡膜のメラノサイトが脱落してメラニン色素の産生が減少するためです。