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星状硝子体症AH自体による視力低下

眼底観察が困難なほどの星状硝子体症asteroid hyalosis: AHであっても通常、その目の矯正視力は正常で、飛蚊症floatersを訴えることもまれです。https://meisha.info/archives/1803

AHで視力障害や飛蚊症が起こりにくい理由

AHの原因であるasteroid body: ABは表面が平滑な球状粒子で、光を散乱しにくいことが視力障害になりにくい理由だとされています。
Khoshnevis M, Rosen S, Sebag J: Asteroid hyalosis-a comprehensive review. Surv Ophthalmol 64: 452-462, 2019.
またABsは硝子体コラーゲン線維に付着、トラップされた状態で有茎硝子体中にのみ存在し、液化硝子体内には出現しません。
(液化硝子体中に見られるものは閃輝性融解 synchysis scintillans https://en.wikipedia.org/wiki/Synchysis_scintillansと呼ばれます。)

上の図で示す眼底写真での平面像では密集しているように見えるABsも、立体的にみると互いに十分に離れていてレーザー光はその間をすり抜けるので、超広角眼底カメラであるオプトスでは比較的鮮明な眼底像を再構築できます。

生理的飛蚊症の目では硝子体線維の凝集物が眼底に影を生じて飛蚊症の症状を呈しますがhttps://meisha.info/archives/446、十分な間隔で散らばっているABsは飛蚊症の原因にもなりにくいと考えられます。

AHによる視力低下

AHで視力が低下するのは下記1. 2.の2つの場合です。
Khoshnevis M, Rosen S, Sebag J: Asteroid hyalosis-a comprehensive review. Surv Ophthalmol 64: 452-462, 2019.
1. ABが中心窩付近に集合していて中心窩視細胞での光受容が障害される場合
2. 後部硝子体剥離によって水晶体後嚢に接する硝子体腔中にAHが濃縮した場合(図)
2.の場合は後嚢下白内障と同様の機序で視力が著しく低下すると考えられます。

上記の2に該当する例の超音波Bモード所見は下記の症例報告論文に示されています。
症例はAHを有する81歳男性の左眼で、白内障単独手術後に後部硝子体剥離を生じ術前0.2の視力が0.02に低下しました。
その後、ビトレクトミー単独手術によって術後視力が1.0に改善したとされています。
池田恒彦: 視力低下をきたす星状硝子体症に対する硝子体手術. あたらしい眼科 34: 1289, 2017.
Ochi R et al.: Case of asteroid hyalosis that developed severely reduced vision after cataract surgery. BMC Ophthalmol 17: 68, 2017.