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結膜母斑のマネージメント

子供の白目の色素沈着の原因として多い結膜母斑は整容的に気になる場合もありますが、悪性腫瘍である悪性黒色腫(メラノーマ)ではないかと心配する親も少なくありません。
不安を解消するには手術で切除した標本の病理検査が必要ですが、ポピュラーな結膜母斑をメラノーマの疑いのもとにすべて手術で切除するのは現実的ではありません。
結膜母斑に特徴的な所見である嚢胞https://meisha.info/archives/2373を確認できればメラノーマは否定的ですが、確認できなければ、通常は数カ月毎に写真撮影して拡大の有無をみます。

結膜母斑は拡大しないか?

結膜母斑の病理検査で、細胞増殖マーカーであるKi67で母斑細胞を染色すると、腫瘤深部では染まらず成熟した細胞像を示すのに対して、結膜上皮下では陽性となり、増殖細胞がみられるとされます。
加瀬諭: 前眼部色素性病変:結膜母斑、虹彩嚢胞、転移性虹彩腫瘍. あたらしい眼科 37: 15-21, 2020.
母斑であっても母斑細胞の分裂増殖によって思春期に入り比較的急速に増大することはあります。
下図のケースでは5年間の経過で色素沈着の増加とともにやや拡大しているように見えます。

炎症性結膜母斑

また色素に乏しい結膜母斑の場合、アレルギー性結膜炎に伴って充血し、浮腫によって一時的に拡大することがあります。
炎症性結膜母斑と呼ばれ、抗アレルギー薬などの点眼でおさまります。
加藤久美子: 炎症性結膜母斑. あたらしい眼科 36: 1155-1156, 2019.