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IgG4関連眼疾患の診断

眼窩炎性偽腫瘍

眼窩内の非特異的な肉芽腫様炎症病変で、眼球突出などの症状を呈する病態は、かつては眼窩炎性偽腫瘍orbital inflammatory pseudotumorと呼ばれました。
星野元宏: 名大眼科の22年間における眼窩炎性偽腫瘍32例の検討. 日眼会誌 84: 28-42, 1980.
その中には、眼瞼の発赤、浮腫と痛みを伴い突然に発症するものと、症状に乏しく緩徐に進行するものが含まれていました。
Hogan MJ, Zimmerman LE. Ophthalmic pathology An atlas and textbook 2nd ed.  763-771 (WB Saunders, 1962).

特発性眼窩炎症

前者の多くは特発性眼窩炎症idiopathic orbital inflammationと呼ばれ、現在も原因は不明です。
伊藤和彦, 久保田敏信: 特発性眼窩炎症. 臨眼 73: 167-172, 2019
一方、後者のうちのかなりの部分は、現在ではIgG4関連眼疾患と診断されるようになりました。https://meisha.info/archives/2391

IgG4関連眼疾患の診断基準

2015年に発表されたIgG4関連眼疾患の診断基準では、以下の3つをすべて満たせば診断は確定します。
1. MRIなど画像診断での腫瘤、腫大、肥厚性病変
2. 組織学的所見
3. 血液検査での高IgG4血症:135mg/dl以上
2. の組織学的所見では形質細胞浸潤がみられ、免疫染色でIgG4+/IgG+の比が40%以上、またはIgG4+の形質細胞が400倍の視野(HPF)内に50個以上のいずれかを示すことが必要です。

MALTリンパ腫を合併するIgG4関連眼疾患

IgG4関連眼疾患の治療の基本は0.6mg/kg/dayでスタートするプレドニゾロンの内服治療です。
しかし、放射線治療や抗がん剤治療が必要な悪性リンパ腫であるMALTリンパ腫を合併するIgG4関連眼疾患は少なくありません。
Japanese study group of IgG4-related ophthalmic disease: A prevalence study of IgG4-related ophthalmic disease in Japan. Jpn J Ophthalmol 57: 573-579, 2013.

そのため、病理組織学的検査だけでなく、免疫グロブリンH鎖(IgH)遺伝子再構成検査は必須です。
図右では3種類の制限酵素のうち1と3の2種類で陰性コントロールでは見られないバンドの出現がモノクローナルなリンパ球増殖を示していて、悪性リンパ腫と診断されます。