甲状腺眼症(TED: Thyroid eye disease, TAO: Thyroid-associated ophthalmopathy)では甲状腺ホルモンの異常と甲状腺関連自己抗体https://meisha.info/archives/420が関係する眼窩の炎症https://meisha.info/archives/408によって、眼球および眼付属器にさまざまな症状や所見が見られます。
これまでNOSPECS, CAS, VISA, EUGOGO classification(略称については下記参照)など、眼瞼、眼窩を含めた種々の眼病変の重症度と活動性を評価する分類が考案されてきました。
NOSPECS: No sign; Only sign; Soft tissue involvement; Proptosis; Extraocular muscle involvement; Corneal involvement; Sight loss
CAS: Clinical Activity Score
VISA: Vision; Inflammation; Strabismus; Appearance
EUGOGO: EUropean Group Of Graves’ Orbitopathy
Barrio-Barrio J et al: Graves’ Ophthalmopathy: VISA versus EUGOGO Classification, Assessment, and Management. Journal of Ophthalmology 2015: 249125, 2015.
日本甲状腺学会と日本内分泌学会から最近発表された「甲状腺眼症診療のてびき」では、表に示す3段階の重症度を基に、活動性(CASや眼窩MRIで評価)を加味して治療方針を決めるとされています。
日本甲状腺学会, 日本内分泌学会. 甲状腺眼症診療の手引き. (メディカルレビュー, p28, 2020).
活動性のある「中等度~重症」と判定されると、ステロイドパルス治療による免疫抑制療法を行うことになります。
その判断はどのようにするのでしょうか?
「てびき」のp28にはNOSPECS分類を日本人にあてはめた井上の分類が紹介されていて、眼瞼後退、眼瞼腫脹、結膜、眼球突出、外眼筋、角膜の各行で明るい黄緑で示された所見が「中等度~重症」に判定されます。
眼瞼後退は「上眼瞼縁 – 角膜上縁」の距離ではなく「上眼瞼縁 – 下眼瞼縁」の瞼裂高で示されていることに注意が必要です。
てびきにはEUGOGOの重症度分類での判断基準も示されていて、以下の4項目中2つ以上を満たす場合、「中等度~重症」と判断するとされています。