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甲状腺眼症の血液検査

甲状腺ホルモンが正常なこともある

高齢の人にみられる複視の一部は甲状腺眼症が原因であることを、2020年8月3日の投稿:[複視患者のMRI依頼は脳と眼窩]https://meisha.info/archives/27で解説しました。
そこで推薦したMRIの脂肪抑制T2強調の眼窩3方向画像で、眼球を動かす上/下/内/外直筋が肥厚し、炎症による浮腫でT2ハイになっていれば甲状腺眼症をまず考えます。
ところがその後の血液検査で、甲状腺ホルモンとその刺激ホルモンであるTSHが正常であると、甲状腺眼症を鑑別から除外する先生がいます。
甲状腺ホルモンの高値やTSHの低値がみられないユーサイロイドGraves、ハイポサイロイドGravesというタイプの甲状腺眼症があります。
Graves病はバセドウ病のことで、ユーサイロイドは甲状腺機能が正常、ハイポサイロイドは甲状腺機能低下ということです。
甲状腺眼症を疑った場合はfreeT3, freeT4, TSHだけでなく、以下の甲状腺自己抗体を測定すべきです。

甲状腺自己抗体

甲状腺自己抗体には抗TSH受容体抗体(TRAb, TSAb)、抗TPO抗体、抗Tg抗体などがあります。
TSH受容体は甲状腺だけでなく、線維芽細胞や眼窩後部の脂肪細胞に発現していて、甲状腺眼症での眼窩内炎症を惹起すると考えられています。
抗TSH受容体抗体には甲状腺に対する作用によって、異なるタイプが含まれています。
TRAb はTSHが甲状腺のTSH受容体に結合するのを阻害する一連の抗体です。
その中には甲状腺を刺激する抗体、TSH作用を阻害する抗体、何も機能しない抗体などが含まれます。
実際には標識されたTSHのTSH受容体への結合阻害作用を指標に測定するレセプターアッセイで測定されます(TSH結合阻止抗体、TSH binding inhibitory immunogiobulin: TBII)。
一方TSAbはTSH受容体に結合する甲状腺機能刺激型の抗体で、サイクリックAMPの産生を指標とするバイオアッセイで測定されます。

陰性でも繰り返し測定

甲状腺自己抗体がいずれも正常だったとしても、甲状腺眼症を否定することはできません。
抗体価は変動するので数カ月ごとに繰り返し測定すると、抗体価が上昇してくることがあります。