• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

甲状腺眼症の血液検査

甲状腺ホルモンが正常なこともある

高齢の人にみられる複視の一部は甲状腺眼症が原因です。https://meisha.info/archives/27
そこで推薦したMRIの脂肪抑制T2強調眼窩3方向画像で、眼球を動かす外眼筋が肥厚し、炎症による浮腫でT2ハイになっていれば甲状腺眼症をまず考えます。
ところが血液検査で、甲状腺ホルモンやその刺激ホルモンであるTSHが正常だと、甲状腺眼症ではないと判断する先生がいます。
甲状腺眼症は抗TSH受容体抗体という自己抗体が原因で発症し、甲状腺ホルモンやTSHには影響されません。https://meisha.info/archives/408
甲状腺ホルモンが正常な甲状腺眼症はユーサイロイドGravesと呼ばれます。
甲状腺ホルモンが低値になるハイポサイロイドGravesというタイプもあります。
Graves病はバセドウ病のことで、ユーサイロイドは甲状腺機能が正常、ハイポサイロイドは甲状腺機能低下ということです。
甲状腺眼症を疑った場合はfreeT3, freeT4, TSHだけでなく、以下の甲状腺自己抗体を測定すべきです。

甲状腺自己抗体

甲状腺自己抗体には抗TSH受容体抗体(TRAb, TSAb)、抗TPO抗体、抗Tg抗体などがあります。
抗TSH受容体抗体には甲状腺に対する作用によって、異なるタイプが含まれます。
TRAb はTSHが甲状腺のTSH受容体に結合するのを競合阻害する一連の抗体です。
その中には甲状腺を刺激する抗体、TSH作用を阻害する抗体何も機能しない抗体などが含まれます。
実際には標識されたTSHのTSH受容体への結合阻害作用を指標に測定するレセプターアッセイで測定されます(TSH結合阻止抗体、TSH binding inhibitory immunogiobulin: TBII)。
一方TSAbはTSH受容体に結合する甲状腺機能刺激型の抗体で、サイクリックAMPの産生を指標とするバイオアッセイで測定されます。

陰性でも繰り返し測定

また上記の甲状腺自己抗体のいずれもが正常だったとしても、甲状腺眼症を否定することはできません。
抗体価は変動するので数カ月ごとに繰り返し測定すると、抗体価が上昇してくることがあります。