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甲状腺ホルモンと甲状腺眼症

内科でバセドウ病の治療がうまくいって、ホルモンの検査値が正常化したのに、目の症状がよくならないと訴える患者さんがいます。それはどうしてでしょうか?

バセドウ病とは

バセドウ病は自己免疫疾患と呼ばれる病気のグループに属します。自分のからだの成分に反応する自己抗体によって甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。
そのため汗をかきやすい、手足の震え、動悸、体重減少など甲状腺機能亢進の症状を示します。
19世紀に病気の名前にもなっているドイツ人医師バセドウによって、甲状腺機能亢進、甲状腺腫(図上)、眼球突出(図下)の3つの特徴を示す病気として報告されました。
このうちの眼球突出はバセドウ病を特徴づける有名な症状ですが、それ以外にまぶたや白目の腫れ、眼の動きの障害による複視などバセドウ病に関わる眼の症状を訴えて眼科を訪れる患者さんは少なくありません。
バセドウ病を含め甲状腺関連の自己免疫によって生じる目の症状は甲状腺眼症と呼ばれます。

ホルモン作用による目の症状と炎症による目の症状

バセドウ病でみられる目の症状の原因は2つにわかれます。
ひとつは過剰な甲状腺ホルモンによって交感神経緊張状態になり、交感神経で支配されるまぶたの中のミュラー筋(瞼板筋)が緊張して収縮するためにみられる症状です。

甲状腺ホルモンによる交感神経緊張症状

甲状腺ホルモンには交感神経刺激作用応があり、上下のまぶたを後方に牽引するミュラー筋(瞼板筋)が過剰に収縮します。
その結果、下方視で上まぶたが下がりにくいvon Graefe徴候(図上)や上下のまぶたの間の距離が拡大する瞼裂開大(図中)、上下のまぶたが後方に引かれて眼球突出はないのに目が出ているように見える眼瞼後退(図下)など、バセドウ病に特徴的なまぶたの症状がみられます。

自己抗体による眼窩の炎症症状

目でみられる症状のもう一つの原因は、抗TSH受容体抗体と呼ばれる自己抗体が、眼窩の線維芽細胞や脂肪細胞に存在するTSH受容体に作用して炎症を起こすために生じる症状です。
抗TSH受容体抗体は甲状腺に機能的に働いて甲状腺ホルモンを増加させるのとは別に、目の後方の眼窩内の脂肪組織や外眼筋に作用して炎症を起こします、
その炎症が眼窩内容の増加や前方に波及してまぶたや結膜の炎症を生じます。
その結果、まぶたや結膜の発赤/腫脹眼球突出複視などの症状を生じます。

甲状腺ホルモンが正常化しても眼窩の炎症は続く

メルカゾール(一般名:チアマゾールMMI)やチウラジール(一般名:プロピルチオウラシルPTU)などの抗甲状腺薬の治療で甲状腺ホルモンが正常化すれば交感神経緊張による目の症状は軽快しますが、抗TSH受容体抗体によって生じた眼窩の炎症に由来する症状はよくなりません。
その治療には眼窩の炎症を抑えるステロイド治療放射線治療が必要です。