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眼白子症OAと黄斑低形成

眼皮膚白皮(ハクヒ)症OCA

皮膚白皮症OCA: oculocutaneous albinismは皮膚、頭髪、ぶどう膜のメラニン色素が欠乏する遺伝病です。https://meisha.info/archives/2772
色白の皮膚と淡い色の頭髪、それに眼振、羞明、低視力が主要徴候です。
眼皮膚白皮症診療ガイドライン作成委員会: 日本皮膚科学会ガイドライン 眼皮膚白皮症診療ガイドライン 補遺. 日本皮膚科学会雑誌 127: 133-135, 2017.
原因遺伝子は複数ありますが、いずれも常染色体劣性遺伝を示します。

眼白子(シラコ)症または眼白皮症OA

一方、メラニン色素の欠乏が眼球内に限って見られるのは眼白子症OA: ocular albinismと呼ばれます。
OAでは全身の皮膚、頭髪には異常はみられませんが、眼振、羞明、視力不良というOCAの眼症状は見られます。
虹彩と眼底の色素脱失の程度はさまざまで、軽度の場合、正常眼底との区別がはっきりしないこともあります。
近藤寛之: 黄斑低形成. 日本眼科学会雑誌 125: 695-708, 2021.
GPR143の異常によるX染色体劣性遺伝で、女性保因者の眼底にはモザイクによる色素ムラが見られることがあります(Nettleship-Falls型)。
小南太郎: 眼白皮症. In: 中村誠 & 大鹿哲郎 (Eds): 眼と全身病アトラス. 総合医学社, 64-65, 2021.

症例

図左は眼振で受診した生後3カ月の男児で、皮膚と頭髪は正常色調でしたが、眼底は明るく脈絡膜血管が透見されました。
母親の弟は10歳時に受診歴があり、病歴を調査したところ矯正視力は0.2/0.4で図中央の眼底写真が撮影されていました。
眼皮膚白皮症OCAほど明るくはありませんが、脈絡膜血管がよく透見されます。
さらに網膜血管が白矢印で示す中心窩に達していて、正常の中心窩構造を欠如する黄斑低形成と判断されました。
図右は症例の母親で図中央の男性の姉にあたります。
OAの保因者で報告されている線状に配列する色素ムラが☆印の部位でわずかに確認されます。

黄斑低形成

OCAやOAの低視力、およびその結果とされる眼振の原因は、黄斑低形成に由来します。
近藤寛之: 眼皮膚白皮(症). In: 中村誠 & 大鹿哲郎 (Eds): 眼と全身病アトラス. 総合医学社, 62-63, 2021.
これは英語ではfoveal hypoplasiaと記載されますが日本では中心窩低形成ではなく黄斑低形成が一般的です。

正常中心窩のOCT所見

OCTで観察すると正常の中心窩には図左のように以下の特徴がみられます。
1. 内顆粒層から神経線維層までの網膜内層の欠如
2. 網膜内面が陥凹する中心窩陥凹foveal pitの存在
3. 外節の伸長に由来するEZの隆起、すなわちfoveal bulgeの存在
4. 外顆粒層の肥厚

黄斑低形成の眼底所見

黄斑低形成ではこれら正常中心窩でみられるOCT所見がさまざまな程度に欠如します。
Rufai SR et al.: Can Structural Grading of Foveal Hypoplasia Predict Future Vision in Infantile Nystagmus?: A Longitudinal Study. Ophthalmology 127: 492-500, 2020.
上図右は4歳女児の原因不明の黄斑低形成のOCT像です。
中心窩での断面であることの確認が困難なので垂直方向の5断面のラスタースキャンを記録しましたが、いずれの断面でも網膜内層が☆印の中心窩を横切り中心窩陥凹、foveal bulge、および外顆粒層の肥厚が欠如しています。
なお網膜血管が中心窩まで伸びて、中心窩無血管野が欠損または縮小することも黄斑低形成の特徴ですが、これらの所見はOCTAにて観察することができます。
小南太郎: 眼白皮症. In: 中村誠 & 大鹿哲郎 (Eds): 眼と全身病アトラス. 総合医学社, 64-65, 2021.