先天性網膜色素上皮肥大CHRPE: congenital hypertrophy of the retinal pigment epithelium https://meisha.info/archives/2878は悪性腫瘍ではない良性の先天性病変のため、現在その病理像を見る機会はあまりありません。
しかし脈絡膜メラノーマとして眼球摘出されることがあった時代の文献では、単層の肥大した網膜色素上皮RPE細胞から成り、上層の視細胞が変性している病理像が報告されています。
Buettner H. Congenital hypertrophy of the retinal pigment epithelium. Am J Ophthalmol 1975;79:177-189.
最近のOCT研究でも病変部のRPEは不規則に肥厚し、その上層の視細胞を含む網膜外層が委縮消失しているとされています。
Fung AT et al: Congenital hypertrophy of the retinal pigment epithelium: enhanced-depth imaging optical coherence tomography in 18 cases. Ophthalmology 2014;121:251-256.
病変部の視細胞が欠如するため、リポフスチンの供給が途絶えて自発蛍光は低蛍光を示しますが、同時に病変部位は暗点になるはずです。
しかし多くのCHRPE病変は網膜周辺部に存在するので、暗点の有無を視野検査で確認するのは困難です。
視野結果は示されていませんが、黄斑部に存在したCHRPEでは比較中心暗点を示すことが報告されています。
玉井一司 他:黄斑部にみられた先天性網膜色素上皮肥大. 臨床眼科 2014;68:193-196.
自験例ですが、図左は中心窩に接して耳側に存在したCHRPEの中心10-2視野で、図右は中心窩の下耳側に存在したCHRPEの目の30-2視野結果です。
いずれも病変部が絶対暗点、あるいはそれに近い深い暗点になっていることがわかります。
なお眼底所見と視野は左右そのままで上下反転すれば対応します。
飯島裕幸. Humphrey視野計でみる網膜疾患. 日本眼科学会雑誌 2016;120:190-208.