黄斑ジストロフィの難病認定には、黄斑ジストロフィ確実例 (Definite) と診断されている必要があり、眼科医が記載する臨床調査個人票の診断カテゴリーにはDefinite 1から4までの4つがあります。https://meisha.info/archives/3495
このうちDefinite 3は特異的な所見が見られる以下の6つの病名のいずれかに診断される場合です。
1) 卵黄状黄斑ジストロフィ(ベスト病)
2) スターガルト病
3) オカルト黄斑ジストロフィ
4) 錐体ジストロフィ、および錐体-杆体ジストロフィ
5) X連鎖性(染色体)若年網膜分離症
6) 中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ
いずれも眼底写真、眼底自発蛍光(または蛍光眼底写真FA)、電気生理学的検査、OCTの4項目について、それぞれの診断要件に合致することを記載します。
上記6疾患以外にも黄斑ジストロフィは存在します。
また非定型例で診断名がつけられない黄斑ジストロフィも存在します。
黄斑ジストロフィの診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:424-42.2019
Definite 1, 2, 4の3つはそのような個別病名のつかない黄斑ジストロフィを認定するためのものです。
その場合、特定の病名は記載しませんが、[両眼の黄斑が進行性に萎縮する]黄斑ジストロフィの診断要件を満たす必要があります。
診断要件はA. 症状、B. 検査所見、C. 鑑別診断、D. 家族歴の4項目です。
A. 症状では急性ではない両眼の視力低下であることが必須です(ただし視力低下の程度は問いません)。
B. 検査所見で規定されている検査は4つです。
①眼底写真:両眼の黄斑部に対称性の病変があること
②眼底自発蛍光またはFA:病巣部の異常蛍光が存在すること
③電気生理学的検査:以下の3つのいずれか、すなわち通常のERG(錐体系)の反応減弱、(多)局所ERGの反応減弱、EOGでのL/D比低下
④OCTでの黄斑部の異常
C. 鑑別診断では薬物中毒、外傷性、後天性疾患、先天性疾患、加齢黄斑変性萎縮型、続発性黄斑変性を除外鑑別します。
これらはいずれも網膜疾患です。
D. 家族歴ではなんらかの家族歴があればよいことになっています。
これらのうちC. 鑑別診断はDefinite 1, 2, 4のいずれでも必須ですが、それ以外のA, B, Dについては以下のごとくです。
A. 両眼の視力低下がありB. の4つの検査所見のうちの3個以上をみたす。
A. の視力低下はなくてもよいが、B. の4つの検査所見のすべてを満たす。
これは視力が正常な初期の黄斑ジストロフィを診断するためのカタゴリーです。
D. の家族歴があることが条件で、これに加えて以下の2つの条件のいずれかを満たす。
条件1:B. の検査所見のうちの2つを満たす
条件2: [A. の両眼視力低下+ B.の検査所見4項目]の5項目のうちの1項目以上を満たす。
Definite 4の条件2の基準では、たとえば両眼の視力低下と家族歴があり、網膜の鑑別診断を除外できればこれを満たすことになります。
しかしそうすると、例えば角膜ジストロフィや優性遺伝性視神経萎縮なども誤って黄斑ジストロフィに認定される危険性があると考えられます。