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CRAOの最新治療

CRAOに対する治療法はさまざまで、眼灌流圧上昇、血管拡張、血栓溶解、神経保護の4つの戦略に大別されます。https://meisha.info/archives/3795
このうち最新の治療法として期待されるのが、血管内治療による血栓溶解新規神経保護剤の硝子体注射です。

血栓溶解治療

CRAOの原因となる塞栓の多くは心臓や頸動脈から網膜中心動脈に飛来する血栓性塞栓です。
血栓を溶かす線維素溶解剤としてかつて広く使用されたウロキナーゼは血栓上のフィブリンだけでなく、流血中に大量に存在するフィブリノーゲンの分解にも消費されるため、効率が悪く現在は使用されません。
これに対して血栓上のフィブリンに選択的に作用する組織プラスミノーゲンアクチベータ tPA: tissue plasminogen activatorは、急性期の脳梗塞に対しては標準治療でCRAOでの効果も海外では報告されています。
ただし点滴静注治療では閉塞した網膜中心動脈に到達する量がわずかであることが欠点です。

そこで硝子体手術を行い、視神経乳頭上の直径100µmの網膜中心動脈に47ゲージ(50µm)のステンレス製マイクロニードルを直視下で刺して、tPAを血栓に直接作用させる血管内治療が日本から報告されました。

ただし塞栓の主体がフィブリンではなくコレステロールやカルシウムの場合は無効であること、および完全閉塞のCRAOには効きにくい点などが問題点です。
門之園一明: 網膜中心動脈閉塞症のアップデート. 日本眼科学会雑誌 124:601-8.2020

神経保護

高圧酸素治療は血中の酸素濃度を上昇させます。
CRAOなど虚血による低酸素で障害を受けた神経細胞の機能を賦活する目的で行われてきました。
一方、急性期の虚血神経細胞では細胞内ATPが枯渇し、小胞体ストレスによって細胞死が進行します。
ATPの分解を抑制する新規薬剤KUS121が最近、京都大学で開発され、硝子体注射による急性期CRAOの神経細胞の細胞死抑制効果が期待されています。
池田華子: 網膜動脈閉塞症に対する神経保護治療の可能性. あたらしい眼科 34:633-7.2017

KUS121のCRAOに対する効果を確認するために医師主導治験が行われ、その結果は良好であったことが報告されています。

Ikeda HO et al.: Safety and effectiveness of a novel neuroprotectant, KUS121, in patients with non-arteritic central retinal artery occlusion PLoS One 15: e0229068.2020