睫毛乱生に対する睫毛列切除術

［逆さまつ毛］では睫毛の先端が角膜を突っついて異物感や角膜上皮障害を生じます。
その病態は一般に以下の3つに大別され、治療も異なります。
1. （退行性）眼瞼内反：眼瞼の支柱である瞼板の支えが失われる結果、睫毛が角膜に接触
2. （先天）睫毛内反：眼瞼皮膚のたるみによって睫毛が角膜に向かい角膜に接触
3. 睫毛乱生：生え方の異常な睫毛が角膜に接触
https://meisha.info/archives/1148

睫毛乱生

睫毛は正常ではマイボーム腺開口部の前方に位置するgray lineよりも皮膚側から、外に向かって生えます。（粘膜と皮膚の境であるMCJ: mucocutaneous junctionはマイボーム腺開口部の結膜側です。図ではマイボーム腺間の暗いスジが眼瞼結膜下に透見されます。）
睫毛乱生の目では異常な睫毛がグレイラインから生えたり、生える方向が角膜側を向いたりします。

下図左の左眼の下眼瞼内側の睫毛は先端が内側に向かっています。
下図右では一部の睫毛が正常の睫毛列よりも内側（結膜側）のグレイラインから生えています。

睫毛乱生の治療

睫毛乱生の治療は以下の3つです。
1. 睫毛抜去https://meisha.info/archives/2653
2. 睫毛根破壊術：電気分解、レーザー光凝固
3. 手術

睫毛列切除術（睫毛根部切除術）

向きが異常が乱生睫毛に対する手術としてはHotz変法があります。
本来は先天睫毛内反に対する手術ですが、乱生した異常な睫毛が角膜に接触しないように方向転換します。
一方、本来の位置よりも結膜側から生えた異常な乱生睫毛に対しては、睫毛列切除術（睫毛根部切除術）があります。
局所麻酔下で挟瞼器を使用して、瞼板と正常睫毛との間（グレイライン）の部位を、異常睫毛の毛根を含めて図のように楔状に切除するものです。
高比良雅之: 睫毛乱生・睫毛重生. 眼科 59:987-92.2017