• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

睫毛抜去(しょうもうばっきょ)と逆さまつ毛手術

まつ毛は本来眼球から遠ざかるように生えます。
逆さまつ毛https://meisha.info/archives/1148ではまつ毛が内側に向かい、その先端が角膜をつつくため異物感や眼痛を訴え、点状表層角膜症(SPK)https://meisha.info/archives/608の原因になります。

睫毛抜去

逆さまつ毛に対する最も一般的な治療は睫毛抜去です。
睫毛鑷子(しょうもうせっし)というピンセットで原因となるまつ毛を挟んで抜き取る眼処置(25点:250円)です(図左)。
しかし睫毛を抜去しても、通常1-2カ月で同じ睫毛根図右)から毛が伸びて再発します。

逆さまつ毛に対する手術

そこで逆さまつ毛の根治を目的とした手術が、その原因と機序に応じて表のように用意されています。https://meisha.info/archives/589
表中のLERLower eyelid retractor(下眼瞼けん引筋腱膜)のことです。https://meisha.info/archives/1148

睫毛抜去VS手術

しかし外来手術であっても眼球周囲をいじる手術をきらう患者さんは多く、睫毛抜去目的に1-2カ月ごとに眼科通院する患者さんは少なくありません。
そのような患者さんで整形外科疾患の治療のため半年以上眼科の通院ができなくなるケースに対して、家族と相談、本人を説得した上で原因となっている下眼瞼の乱生睫毛に対して、睫毛列切除術を外来で行いました。
8カ月ぶりに受診した患者さんからは、入院中逆さまつ毛でわずらわされることなく、手術してよかったと感謝されました。

ソフトコンタクトレンズSCLユーザーの睫毛乱生

またそれほど多くはありませんが睫毛抜去や手術以外の対処法もあります。
近視でソフトコンタクトレンズSCLの相談で受診した高校生から、軽度の先天睫毛内反に対する手術について相談されました。
そこでまずSCLの使用を勧めたところ、SCLによって内反睫毛による角膜刺激がブロックされることを実感できて手術を回避できました。

無症状の眼瞼内反

また下図は80歳男性の右眼で、他院にて退行性下眼瞼内反に対する手術を勧められ受診しました。
図左のように下眼瞼を他動的に外反させれば睫毛は角膜に当たりませんが、瞬目をすると図右のように睫毛ごと下眼瞼皮膚がめくれこみます。
ただしこの状態では角膜と眼瞼に挟まれた多数の長い睫毛の腹の部分が角膜に接触しますが、睫毛の先端が突っつくわけではないので、異物感も点状表層角膜症(SPK)もみられません
症状のない眼瞼内反であればあえて手術でなおす必要がないことを説明して、手術は行わず経過をみることとなりました。