網膜細動脈瘤 RAM: retinal arterial macroaneurysmは網膜中心動脈の枝に生じる瘤状の血管拡張です。
高血圧の高齢者に多く、出血や滲出による視力低下で気づかれます。
Moosavi RA et al: Retinal artery macroaneurysms: clinical and fluorescein angiographic features in 34 patients. Eye (Lond) 20:1011-20.2006
出血はRAMの瘤の壁の破綻ruptureが原因です。
瘤は内境界膜ILM: internal (or inner) limiting membrane から外境界膜ELM: external limiting membraneの間に位置します。
その前壁が破綻すると網膜前出血や硝子体出血を生じます。
網膜前出血の血液はILM下、あるいはILMと後部硝子体膜の間に貯留します(図左はおそらくILM下出血)。
いずれであっても網膜血管は血液に隠れて観察できません。
瘤の後壁からの出血は視細胞層とRPEの間に貯留し、網膜下血腫あるいは黄斑下血腫と呼ばれます。
瘤を生じた原因の細動脈を含め、網膜血管は暗赤色の血腫上に観察できます(図中央)。
網膜内に出血がみられることもありますが、網膜前や網膜下のような潜在的なスペースがないので出血量はわずかです(図左)。
瘤の壁の破綻ではなく透過性が亢進すると、出血ではなく血漿成分が漏れ出て網膜浮腫や漿液性網膜剥離を生じ、輪状白斑や星芒状白斑などの硬性白斑がみられます(図右)。
出血の場合はいずれも突発性で中心窩を含むと、高度の視力低下をきたします。
自然吸収あるいは硝子体手術で出血を除去できれば、硝子体出血や網膜前出血の視力予後は良好です。
しかし中心窩にかかる網膜下出血では、短期間のうちに除去できなければ視力予後は不良です。https://meisha.info/archives/2201
斎藤克也, 飯島裕幸: 網膜細動脈瘤の黄斑部病変と視力予後. 日本眼科学会雑誌 101:148-51.1997
これはヘモグロビンに含まれる鉄イオンなどの視細胞毒性によります。