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帯状角膜変性の治療

帯状角膜変性はカルシウム沈着による角膜表層(主にボウマン膜)の混濁です。
3-9時方向の瞼裂部に一致してみられ、視力障害や疼痛の原因になります。https://meisha.info/archives/4303

治療

視力改善、疼痛対策、外見的改善などの目的で以下の治療法が選択されます。
1. エキシマレーザーによる治療的角膜切除術PTK: phototherapeutic kerratectomy
角膜表層の実質を100µm程度の厚みで混濁ごと滑らかに切除する治療です。
治療後に2D以上の遠視化を生じる欠点があります。
2. 希塩酸治療
希塩酸でpHを低下させて、沈着するリン酸カルシウムを溶解させる治療です。
3. EDTA治療
キレート剤(金属イオンを結合する作用を有する化学物質)によってカルシウムイオンを角膜から除去します。
山梨大学病院では以前はPTKを行っていました。
しかし使用頻度が低いエキシマレーザーは、高額な機器メンテナンス(ガス交換や機器補修)費用を負担できなくなった2010年代に使用できなくなりました。
それ以後は希塩酸治療を行っています。

症例

40歳女性のAさんは1型糖尿病による増殖糖尿病網膜症で30歳の時に硝子体手術を両眼に複数回受けて、右眼は1.0の視力を回復しましたが、左眼は0.1にとどまっていました。
近医でフォローされていましたが、左眼の疼痛を主訴に再度紹介されました。
左眼の中央には濃い角膜混濁がみられ(図左)、痛みは角膜上皮剥離のためと考えられました。

角膜上皮再生障害の原因である帯状角膜変性に対して希塩酸治療を行いました。
具体的には角膜上皮を剥離後、1%希塩酸を染み込ませた綿棒を混濁部に塗布し生食で洗浄します。
これを繰り返すことで角膜混濁は軽快し(図中央)、治療後の角膜上皮の回復によってフルオ染色もわずかです(図右)。
網膜病変のために視力は不変でしたが疼痛は軽快しました。