黒目に映るフラッシュの白点の位置をみる角膜反射法https://meisha.info/archives/473で斜視は診断できます。
しかしたとえば黄斑偏位では外斜視ではなくても黒目の内側に角膜反射ができます。
斜視診断のゴールドスタンダードは実は角膜反射法ではなく、遮閉試験 CT: cover testです。
斜視患者さんで視線が目標に向かう目は固視眼と呼ばれます。
その時、反対側の目(非固視眼)の視線は内斜視では内に、外斜視では外にずれています。
固視眼を手のひらで隠すと非固視眼は、外斜視では外から内、内斜視では内から外に動きます。
目のわずかな動きでも、動きの有無とその方向の判断は容易です。
図左の外斜視の患者さんで固視眼の左目を半透明の遮閉板(遮眼子または遮蔽子 occluder)で隠すと、非固視眼の右目が外から内に向かって動くのがわかります。
(この時隠された左目は外に向かって動きますが、半透明の板ではなく眼科医の手のひらで隠す場合はわかりません。)
同様に図右の内斜視では、非固視眼の右目が内から外に動くのがわかります。
隠した目の遮閉板をはずす際の目の動きを見る検査は、遮閉除去試験(アンカバーテスト)と呼ばれます。
この時、外斜視では優位眼によって、両目とも動かない場合(図下左)と両目とも動く場合(図下中央)があります。
一方、反対目は動かず、遮閉をはずした側の目だけが外から内に動く場合は外斜位(図下右)です。
外斜位は両目開放時には視線がともに目標に向かい、片目を隠した時だけその目の視線が外にずれる状態です。
これに対して外斜視では両目を開いているときも、どちらかの目の視線が外にズレます。
間欠性外斜視は外斜視と外斜位が同居する状態です。
両目開放時であっても、集中していると視線がそろい(外斜位)、眠くなるとどちらかの目が外にはずれ(外斜視)ます。
遮閉試験と遮閉除去試験はセットで行われ、遮閉-遮閉除去試験CUT: cover-uncover testと呼ばれます。
広義の遮閉試験には交代遮閉試験 ACT: alternate cover testという方法もあります。
これは遮眼子を右目からすばやく左目に移動し、その後左目から右目にすばやく戻すことを繰り返す試験です。
両眼が開放される瞬間がないことがポイントで、外斜視であっても外斜位であっても目は動きます。
しかも半透明板でなければ右目から左目に遮眼子を動かすとき、右目の動きはわかりますが左目の動きはわからないので、見える目の動きは常に外から内の方向です。
内斜視、内斜位の場合は内から外への動きになります。
交代遮閉試験はプリズムを使用すると斜視角の定量検査にもなります(プリズム交代遮閉試験 APCT: alternate prism cover test)。