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黄斑浮腫の視力低下機序

前回、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫では、黄斑浮腫自体以外に中心窩の視細胞障害と乳頭黄斑線維束での網膜内層虚血が視力低下の原因になることを説明しました。
https://meisha.info/archives/571
黄斑浮腫のOCT像(図左)に網膜組織構造(図右)を対応させてみると、黄斑浮腫(②)、視細胞障害(①)、内層虚血(③)のそれぞれに関係する網膜の神経細胞の障害が理解しやすくなります。

角膜、水晶体、硝子体を通過して入射した光は網膜の一番奥にある視細胞の外節(①)で視物質(ロドプシンや錐体色素)に吸収され、その情報は②の視細胞軸索を通じて双極細胞に送られます。
黄斑浮腫では図左のように浮腫液は外網状層と内顆粒層に貯留します。
その際、視細胞の軸索周囲のイオン濃度など細胞外環境が乱れて神経伝導が障害されて視力が低下すると考えられます。(黄斑浮腫は中心窩前方の網膜内構造の乱れによる光の散乱で視力を低下させるとの考え方もかつては信じられていましたが、いくつかの臨床的な観察結果から、軸索伝導障害による機序が正しそうです。)
軸索伝導障害による視力低下は可逆性で、抗VEGF薬で浮腫が吸収されると通常、視力は回復します。
しかし網膜下出血や硬性白斑などの続発性の変化で①の視細胞外節が障害されて、隣接する内節を表すEZ (ellipsoid zone)が不明瞭にな場合、視力低下は不可逆性で黄斑浮腫が吸収されても視力は回復しません。
また網膜表層を走行する網膜静脈につながる毛細血管の脱落によって、双極細胞や③の神経節細胞およびその軸索が虚血壊死しても不可逆性の視力障害が残ります。