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カタル性角膜潰瘍

フルオで染まる角膜の傷

目の表面の痛みの患者では、角膜をフルオレセインナトリウムhttps://meisha.info/archives/283で染めて細隙灯顕微鏡で観察します。
青色光で照らすと染色された角膜の傷黄緑色の蛍光を発して、その形や拡がりがわかります。
よくみられる変化は、多数の点状に染まる点状表層角膜症(SPK)や、面状に染まる角膜上皮欠損です。
角膜表面が掘れて蛍光色素が貯留していると角膜潰瘍と診断されます。

すっきり治らない角膜潰瘍

角膜潰瘍の多くは細菌性なので、培養用綿棒(カルチャースワブ)で擦過して採取した検体を、細菌培養検査に出した後、通常は抗菌薬の目薬で治療します。
多くは治療によく反応しますが、すっきりとはよくならず再発を繰り返す場合があります。
そのような病気のひとつがカタル性角膜潰瘍です。
横井則彦. カタル性角膜潰瘍. In: 井上幸次, ed. 眼科診療クォリファイ25 角膜混濁のすべて: 中山書店.124-30. 2014

症例:25歳女性

左目の異物感があり、抗菌薬目薬で1カ月治療されましたが、よくならず紹介されてきました。
左目の角膜上方周辺部に白色の病変が3個みられ(図左)、周囲の白目には毛様充血がみられます。
カタル性角膜潰瘍の診断で抗菌薬に加えてステロイド薬(フルメトロン)の目薬を追加しました。
2日で劇的に改善し(図中央)、その後1カ月以上再発はありません(図右)。

カタル性角膜潰瘍の治療

細菌性角膜潰瘍では緑膿菌や肺炎球菌が角膜実質を溶かしながら増殖します。
一方、カタル性角膜潰瘍は眼瞼縁で増殖したブドウ球菌の菌体抗原(プロテインA)に対するアレルギー反応で、白血球の攻撃で角膜が障害されます。
したがって治療の主役は抗菌薬ではなく、白血球の働きを抑えるステロイドです。
ただし生体の免疫反応を抑えるステロイドは細菌の増殖に対しては逆効果になるので、細菌性の角膜潰瘍なのか、アレルギー反応のカタル性角膜潰瘍なのかの見極めが重要です。