緑内障の治療の目的は眼圧を下げて、視神経の障害を遅らせることです。
点眼治療薬だけでは眼圧の低下が不十分な場合には手術が行われます。
通常行われる緑内障の手術は流出路再建術と濾過手術の2種類に分類されます(そのほかにも急性緑内障発作予防の虹彩切除術や房水産生量を減らす毛様体破壊術などがあります)。
流出路再建術は線維柱帯の目詰まりを解消することが目的で多くの種類があります。
眼球に対する負担は軽く、術後の合併症も軽いメリットはありますが、眼圧下降効果は濾過手術には及びません。
濾過手術の代表は線維柱帯切除術 Trabeculectomyです。
線維柱帯は角膜裏面の周辺にあって、房水を満たす前房に面しています。
毛様体で作られる房水は、瞳孔を経由して前房に出た後、線維柱帯を通ってその奥のシュレム管から上強膜静脈に排出されます。
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線維柱帯切除術では線維柱帯の一部を切り取って、そこからシュレム管を経由することなく強膜の外に抜けるトンネルを作ります。
手術後の房水はこのトンネルを流れ出て、強膜と結膜の間にできたブレブという水たまりに溜まります。
溜まった房水は強膜の表面の血管から徐々に吸収されるので、眼圧を10ミリメートル水銀柱以下の低いレベルに低下させることができます。
線維柱帯切除術のコンセプトは、シュレム管を経由する正常ルートではない房水排出のバイパス路を作るということです。
首都圏の中小河川での洪水を防ぐために、ゆとりのある江戸川に流す首都圏外郭放水路の考え方と似ています。